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2014年05月14日 00:00
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大韓民国への反逆 その連鎖を絶て(13)
詳しく記された朴正煕暗殺と光州事態

 康宗憲は拘置所での獄中記として、朴正熙大統領暗殺事件と光州事態に対する詳細な解説を記録している。彼自身が直接報道に接することはできなかったのに、長々と書いている。文世光の朴大統領狙撃事件に対して徹底的に無視したのとは対照的だ。
おそらく出獄後に習得した情報を整理した内容だろうが、あたかも拘置所内で見聞きした状況のように書いている。康宗憲は、「私に死刑を科した彼よりも長生きできたことが、せめてもの救いでした」(自叙伝92ページ)と書いた。康宗憲には自分が韓国の国法に違反したため裁判を受けたという意識はない。
「朴正煕は金載圭の銃弾によって死んだのではない。その背景となった民衆の蜂起によって生命を絶たれたのです」(同92ページ)
やはり民衆論、民衆の蜂起、つまり康宗憲の民衆革命への熱い期待が感じられてくる。
康宗憲が光州事態を記録した件も同じである。
「戒厳軍の無慈悲な殺戮に対抗し、光州の民衆は武器を取り、市民軍を組織してたたかいました。(中略)二七日の未明、空挺旅団の一斉攻撃を受け道庁の市民軍は制圧されました。抗争の期間、政府が確認した死者だけでも二〇〇人を超えた規模です。光州の民衆は、投降し”暴徒”として生き残るよりも、『市民軍』として最後までたたかい民主化運動の大義と歴史のなかで記憶される道を選んだのです」(以上自叙伝94ページ)
康宗憲の思い込みは、事実関係を区別する理性を麻痺させている。市民が恣意的判断で武装して公権力に立ち向かうのを正当化するのは法治国家ならありえないことだ。そして当時の状況は、戒厳部隊の過剰鎮圧に興奮し、刺激されたデモ隊が暴力化したというのが事後の公式調査結果であって、「無慈悲な殺戮に対抗し」民衆の武装が始まったのではない。これは法廷でも明らかにされた事実だ。「無慈悲な殺戮」とは完全なデマ、それこそ不純分子の煽動だった。
1980年5月27日の鎮圧は、空挺旅団ではなく、第20師団によるものだった。光州には今もいわゆる「市民軍」ではない、身元が特定されない死者がいる。銃傷で死んだ人々の多くは戒厳軍の銃器でない銃に撃たれて死んだ犠牲者だった。康宗憲の目には韓国政府に対抗するものはすべてが正義の民衆に映るのだろうか。
康宗憲は、全斗煥大統領が”御用代議員”による間接選挙制で選出されたと批判している。だが、連邦制統一を熱く主張してきた、彼の祖国である北韓・金氏王朝では、最高指導者をどう選ぶのか。世襲ではないか。
康宗憲は死刑から無期懲役刑に減刑されたときも、大韓民国の司法制度や大統領の恩赦に少しも感謝しなかった。それどころか、彼は大田矯導所へ移送されてからの獄中生活記で、非転向長期囚などに同情し、彼らを弁護する。康宗憲の思想と彼の祖国がどこなのかが改めてわかるので引用する。
「特別獄舎には一坪余りの独房が三〇個ほどあります。一列に並んでいます。すべて国家保安法違反者で、ほとんどが私のような無期囚でした。しかも大半が、すでに二〇年近い歳月の間収容されているのです。祖国統一の使命を帯び、北から南に派遣された人たちでした。この人たちを矯導所当局は、韓国に帰順させるべき『非転向長期囚』と分類しました。しかし当事者の立場からすれば、朝鮮労働党員としての矜持と信念を守る『非転向長期囚』なのです。思想と信条の自由を認めない反共国家において『非転向長期囚』の獄中生活はまさに命がけでした」(自叙伝104ページ)
康宗憲と非転向長期囚同志との友情関係は後に平壌での再会につながる。この話はこの連載ですでに紹介したが、無期囚として服役していたときの状況を次号から検討してみよう。(続く)

2014-05-14 1面
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