朝鮮総連中央本部会館(東京・千代田区)の売却問題が再び混乱の様相を呈している。宗教法人や正体不明のモンゴル企業が落札に失敗したが、このほど不動産会社「マルナカホールディングス」(高松市)が22億1000万円で落札したことで事態は最終段階に入った。だが、北韓側はここにきて、総連会館の売却に強く反発。北韓と政府間協議で拉致問題を解決したい日本に、厳しい条件が突きつけられた。
北京での日朝外務省局長級協議に出席した北韓の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使は1日、北京空港で記者団に対し、会館の売却許可決定が出たことに強く反発。「この問題の解決なくして、日本との関係進展自体、必要ない」と述べ、日本側に何らかの対応を求める姿勢を示した。総連はマルナカへの売却許可決定が出た3月24日、落札額が低いとして不服申し立て(執行抗告)をした。今後、抗告は東京高裁が審理するが、明確な手続き違反などがない限り、地裁決定は覆らない見通しだ。
東京高裁が執行抗告を無効と判断した場合、総連は最高裁に申し立てをする可能性が濃厚と見られている。5月に全体大会を控えている総連執行部としては、全国から幹部が集まる同大会までに会館が第三者の手に渡るのは避けたいはずだ。
元活動家は「全体大会は本国の決定を追認する場だから、どのような事態があっても大会が紛糾することはない」と話す。しかし、「大会後に各地の幹部らが食事でもしながら会館のことを話すのは間違いなく、組織への忠誠心が揺らぐのは間違いない」と分析する。また、人事に何らかの影響が出る可能性も否定できないという。
宋大使は日朝政府間協議を終了後、「協議の中で、いかなる場合でも強制的に売却されてはならないという立場を明らかにした」と語気を強めた。今回の政府間協議で、日本側は司法手続きが進む事案に政治介入できないとの立場を示したが、拉致問題の再調査や遺骨返還などの協議を続けるため、何らかの措置を取る可能性は排除できない。総連が売却の許可決定に不服申し立てをしたのも、明け渡しを先延ばして時間を稼ぐ狙いがあるとみられる。 |
- 2014-04-09 3面
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