北韓の態度が一転した。「戦争も辞さない」と対南強硬発言を繰り返してきた北韓が、韓国政府の要求を受け入れる姿勢を”演出”した。12日と14日に行われた南北次官級接触と離散家族の再会協議で、北韓の態度は異常なほど融和的だった。両者は南北離散家族の再会の実施や、互いの誹謗中傷の停止、必要に応じた高官級接触の継続で合意。ただ、離散家族の再会は土壇場での中止の可能性があり、青瓦台(韓国大統領府)が前面に出て交渉にあたったことの影響を憂う声もある。
| 協議を行う南北の代表者 | 北韓は8日、国防委員会名義で青瓦台の国家安保室に通知文を送って高位級接触を提案。12日の接触では成果を上げられなかったが、14日の接触では、離散家族再会を今月20日から25日まで予定どおり行うことなどで合意した。互いの誹謗中傷をやめることと、高位級の接触を今後も継続することも合意事項に含まれた。
北韓は韓国政府の公開会議要求や、会談場所(板門店の南側地域にある「平和の家」)の提案も受け入れた。また、朝鮮中央通信は3項目の合意内容を、韓国統一部の発表と同じタイミングで発表。代表者が国防委員会である点も公開し、南北の最高決定機関の合意であることを知らせた。
青瓦台が前面に
今回の接触で特記すべき大きな問題は、青瓦台が前面に出たことだ。これまで政府は、統一部を担当にする形をとってきた。しかし今回、青瓦台の国家安保室が南北対話の前面に立っていることが明らかになった。
南北対話に青瓦台が乗り出したのは、07年12月以来7年ぶりだ。北韓も通知文の受信者を国安保室に指定し、大統領府と直接コミュニケーションをとる意思を明確にした。今回の接触も次官級レベルではあるが、事実上朴槿惠大統領と金正恩との間の意見交換だと分析されている。
最高位級のホットラインを稼動させていることを明らかにしたことで、大統領にかかる責任は増す。南北対話で迅速な意思決定と妥結をもたらす可能性もあるが、内部の意見調整や交渉の軌道修正が難しくなる。政権首脳部の南北関係改善への焦りが表れたもので、副作用を招く危険性もあると指摘されている。
北韓の狙いは?
今回南北が合意した3項目のうち、注目すべきは高位級接触の継続だ。北韓が必要とする経済的支援と結びつく項目であるともいえる。
南北関係の専門家らは、離散家族再会が終わる時点で北韓が本音を見せると予想している。北韓の交渉担当官は対南交渉のベテランだ。無条件で離散家族再会を受け入れることはないという分析が可能だ。
北韓が次回の高位級接触で、金剛山観光の再開や5・24措置(天安艦爆沈後の対北韓制裁)の緩和などを迫ってくるというのも、大多数の専門家の見方だ。また、24日から始まる韓米合同軍事演習を理由に、離散家族の再会中止を示唆する可能性もある。
北韓は対南政策の「平和攻勢後・挑発」のサイクルで動いてきた。自分たちの要求が受け入れられない場合、対南挑発に局面を転換する可能性もある。 |