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2013年01月03日 09:52
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金正恩の2013年新年辞分析

    張真晟(脱北者初の新聞ニューフォーカス代表)

金正恩の2013年新年辞の意味

 北側が19年ぶりに指導者の‘新年辞’を公開した。北韓で‘新年辞’とは、首領が年間ただ一度住民に行う肉声教示という意味だ。神格化国家であるため新しい年に各分野に下達する首領の命令であり、法的教示をも意味する。金日成が死ぬ前までは首領主義の伝統として続いてきた。金正日は肉声新年辞の代わりに、北韓のあらゆる階層を代弁する新聞である‘労働新聞’、‘朝鮮人民軍’、‘青年前衛’の共同社説を以って新年辞の代わりにした。

 ところが、北韓では新年辞は首領の一部のようになっているため、金正日の指針と同格で‘共同社説’を絶対化した。それで、北側は1995年から党生活総括の時は、党員たちは金日成と金正日の指針と共に‘共同社説’をまず引用し、そこに基づいて自己反省をするようにした。

 今回 金正恩が直接新年辞を朗読したのは、父の金正日より祖父の金日成と繋がりたいという心理が大きかったためと言えよう。それほど金正日に対する住民の不信を金正恩自身もよく分かっているようだ。それで、驚くことにも、新年辞を‘親愛なる同志たち!’で始めた。

2013年の新年辞に登場した新しい単語ら

 北韓で‘親愛’という言葉は金正日にだけ該当する独占的用語だった。‘敬愛する金日成’、‘親愛なる金正日’と名前の前の敬称を差別化したが、この金正日の神格化のための独占用語を2013年の新年辞を契機に、同志たちに与えたのだ。これには二つの大きな目的があると思われる。一つは‘親愛なる指導者’はもう存在せず、唯一権力の‘敬愛する金正恩’だけを浮き彫りにするため、二つ目は、世襲指導者と同志たちとの関係において‘親愛’をアピールするためだ。

 今年の新年辞には以前はなかった新しい単語もある。‘白頭山大国’という表現を使用し、その延長線で北韓軍を‘白頭山革命強軍’と表現している。これも金日成の革命伝統の根を白頭山と主張する金日成主義と無関係ではない。また、金正日政権がこれまで主張してきた‘強盛大国’から‘強盛国家’に縮小、変更した点も目を引く。

 金正日が主張していた強盛大国の本質は、理念強国と軍事強国に基づく自立経済の強国だった。だが、世界最貧国が‘大国’を云々すること自体が北韓住民に嘲弄された。また、このような不信感が、金正日政権の政策にまで及ぶや、金正恩は‘金正日の強盛大国’を‘金正恩の強盛国家’、つまり強い国として再定義しようとしたようだ。それで‘強盛国家’から‘社会主義強国’、‘天下第一強国’という概念を追加して、‘大国’を消したことを補完した。

 こういう国家概念の再定義は、政策に関する新しい表現でも現れる。金正恩の新年辞では、驚くべきことに、‘正確な領導’という表現が登場する。金氏一家の神格化を最優先する北韓で、‘領導’は‘偉大’と同意語だ。北のような世襲国家で党の領導を‘正確な領導’と格下げしたのは事実上大変な言語革命だ。金正恩政権の党運営を‘正確な領導’に公論化したのは、金正日政権の国政失敗に対する住民の不満を深刻に意識していることを示唆する。

金正恩の新年辞に出た2013年の目標

 金正恩の新年辞は大きく二つで構成されている。2012年の評価と2013年の課業だ。2012年の評価は、主に金正日の死亡とその後もっと団結した体制の安定を誇示し、長距離ロケット実験の成功を強調した。新年辞の分析で重要なのは今年の課題だ。新年辞は伝統的に5つの部分で構成される。

 第一は、新しい年の国家情緒の設定だ。体制理念だけで長い年月を堪えなければならない北韓政権は、多様な国家情緒を通じて住民を洗脳し内部結束を誘導する。新年の国家情緒の設定は、必ず国家記念日と連繋させる。なぜなら、新年の最大の国家的行事に政治的焦点を合わせて、住民動員や思想評価を強要することができるからだ。金正恩の新年辞が規定した今年の国家記念日は‘朝鮮民主主義人民共和国創建65周年’と‘祖国解放戦争勝利60周年’だ。これは、‘共和国’創建の初心を利用して3代世襲政権の安着と、それのための6.25戦争の戦時雰囲気を利用しようとする意図だ。

 第二は、経済分野だ。金正恩は新年辞で、“宇宙を征服したその精神、その気迫で経済強国建設への転換的局面を開こう! これが今年のわが党と人民が掲げるべき闘争スローガンです”と言った。これは今年も改革でなく、突破精神の自立経済路線を推進するという意図を現わした件だ。その決意は至る所で見られる。
“今年の全ての経済事業は既にできている自立的民族経済の土台をさらに強固にし、うまく活用して生産を積極的に増やし、人民生活を安定向上させるための闘争を貫かねばなりません。”

 ここで自立的民族経済よりも鎖国的な言葉は、“人民生活を安定向上”と言ったことだ。今の経済政策の中で復興より安定を選んだのだ。金正恩の改革拒否意志は“我々は、我々式の社会主義経済制度を確固として固守し、勤労人民大衆が生産活動において主人としての責任と役割を全うするようにする原則から経済管理方法を改善して完成”と明示までした。

 第三は、軍事分野だ。金日成の‘一当百’のスローガン発表50周年になる今年を強調することで、‘白頭山訓練’に基づいた軍の規律と補完を強調した。特に、‘朝鮮人民内務軍’の存在を強調したのは、内部の結束と取締を強化するという意図と解釈される。

 第四は、社会分野だが、奇異にも社会主義文明強国建設を主張した。これは金正恩政権が新しい文明を開拓するという意味で、社会雰囲気を変化させるという意図と解釈される。

 第五は、“幹部たちの思想的観点と事業気風、仕事の遣り方を根本的に改善せねばならない”は、権力の環境と秩序に関する要求だ。ここで注目すべきことは“党と人民の前で自分の忠実性と実践力に対する評価を受けねばなりません”と特に強調した点だ。今年もまた権力再編のための幹部粛清が予告された件でもある。

 第六は、対南・対外部分だ。対南分野では6.15と10.4宣言を前提とする民族優先、民族重視、民族団結の3大条件を強調した。これは、朴槿恵大統領の対北政策に対する答えであり、北側の対南政策である‘わが民族同士戦略’を南北共助の原則として要求するものだ。対外政策は、単純に自主、平和、親善の理念の下で誰とも連帯できると形式的に仕上げた。

金正恩の新年辞に対する評価

 一つ、権力の自信感を示す具体的な政策がない。
 金正日の場合、権力の自信感は主に対内政策より対外政策で表出された。対南政策も対話相手の差別化や公開的明示、あるいは‘わが民族同士戦略’の中での段階的に要求したりした。対外政策も、米国に条件を提案したり、北核をてこにして協商過程で要求を突きつけた。

 ところが、金正恩は自慢すべき長距離ロケット実験の成功を対内問題にだけ制限し、対南・対外政策では小心で象徴的主張にとどまった。政策の空白は権力の空白を意味する。対内政策は具体的である反面、対外政策は何も提案できなかった点、これは金正恩政権がまだ対外関係を主導するほど権力が十分でないことの反証かも知れない。

 二つ、今年北韓に経済改革はない。
 牡丹峰楽団の公演が公開された時、外部世界は音楽や照明を見て北韓の改革の可能性を慎重に期待した。だが、そういうものらは新年辞で言及した金正恩式の社会主義文明を誇示するものであって改革政策とは関係ない。金正恩政権が本当に改革の意図があるなら、今回の新年辞で、まず中国との血盟関係を強調すべきだったのに全くない。また、新年辞の色んな所で見られる自立経済路線の強調は、北韓が国家の復興より3代世襲権力の安定のための鎖国政治をもっと強化するという意味と思われる。

 三つ、金正恩にとって2013年は権力の過渡期
 新年辞の冒頭で金正恩は幹部たちを‘親愛なる同志たち’に、軍と住民は‘勇敢な人民軍将兵と愛する国中の全人民たち’に、海外同胞は‘懐かしい同胞兄弟の皆さん’に分類した。金正日は命令指導体制だったため自分の外に親愛なる人物がなかったが、金正恩は一応権力層の幹部たちを‘親愛なる’と呼んであげた。ところが、問題は新年辞の中に含まれている強硬な権力意志の表現らだ。

 幹部たちは自分たちの実力を党と人民の前で評価を受けねばならないと言った点、‘朝鮮人民内務軍’の活動を強調したこと、他にも改革政策と対外政策での変化はなく、すべての論理が内部結束に集中していることだ。ここに戦勝60周年、共和国創建65周年のように戦時や建国精神まで加わるため血の粛清が避けられないと予想される。

www.newfocus.co.kr 2013-01-02 02:52

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記事: 洪熒 (hyungh@hanmail.net)  
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