田溶徳(大邱大学校教授、経済学)
企業フレンドリー(親企業政策)から「中小企業プレンドリー」へ
李明博政府は当初は「企業フレンドリー(親企業)」を標榜した。ところが、最近いくつかの大企業が途方もない利潤を出すや中小企業らの不満の声が噴出した。ついに政府は大企業の事業領域拡張を抑制する政策らを出している。「中小企業適合業種政策」、SSM(企業型スーパーマーケット)への進入規制、「同伴成長」政策などの政策がそれだ。今や企業フレンドリーから「中小企業フレンドリー」に看板を変えるべき状況だ。
中小企業適合業種保護、SSM進入規制などは、一部の業種で大企業の進入を阻止して中小企業を保護するという趣旨の政策だ。こういう政策は色々な争点を内包している。核心的争点の一つは、何よりも果たしてそういう政策が中小企業を本当に保護できるのかということだ。中小企業の保護を目的とする他の政策も事情は似ている。
結論から言えば、中小企業適合業種政策などのように中小企業の保護を目的とする政策が、逆説的にも中小企業を保護してくれないということだ。例えば、中小企業適合業種政策の前身と言える中小企業固有業種制が盧武鉉政府の時廃棄された事実がその点を象徴的に示している。もし、その政策が効果があったら、親庶民・親労働者・親中小企業政策を標榜した盧武鉉政府が中小企業固有業種制を廃棄する筈がなかったではないか?
保護をしたら競争力が付くのか
保護をして競争力が生まれないという事実は経済原理を超えての常識だ。この点は商業の世界だけに適用されるのではなく人間のなす全てのことに適用される。だから、われわれは可愛い子供であるほど競争がもっと激しいところに入れるのではないか? 保護を通じて競争を抑制すれば結果は見るまでもない。競争と(進入規制を通じての)競争の抑制を比喩したら、競争は熱いパンの上に載せられることだが、競争を抑制すれば火の上にそのまま落ちるようなことだ。つまり、競争は難しく厳しいが、競争を抑制することは死か破滅という、競争よりもっと悪い結果を齎すということだ。したがって、政府は「進入規制」を含む保護を目的とする政策を廃止し、大企業か中小企業かを問わず全ての企業を苛酷な競争の世界へ入れねばならない。
政府の中小企業への各種支援や保護が中小企業をこれ以上大きく成長させない問題点も指摘せざるを得ない。大企業に比べると税金恵沢のような中小企業への支援や保護が少なくない。ところが、中小企業は一定の規模を超えたらそういう支援や保護が受けられない。したがって、一部の中小企業は、企業を分割する方式などで政府の支援や保護を引き続き受けようとするため、実際には中小企業ではないながら、名目上には中小企業として残こるようになる。
中小企業と大企業を区分することが経済原理に基づいていない。二つを区分する基準の一つである被雇用人の数が、時代により変わってきたという事実がその点を示す。結局、中小企業と大企業を区分する理由は、行政的な便宜や政治的な目的のためだ。この点からも、中小企業と大企業の区分に基づいて進入規制をせねばならないという発想は、理論的に全く根拠のないことだ。
中小企業保護政策は人為的な独占の一つ
「進入規制」は独占の一つの形であり、独占はそれにより多くの弊害を生み出す。消費者たちが自らが望む財貨が買えないという点、潜在的な生産者らも進入が禁止されている業種において事業機会が掴め難いという点、一つの産業や市場で事業の機会が抑制されると他の産業や市場での収益率が低くなる点、独占による利権が生まれる点、各種の非効率、需要によっては消費者が高い価格を支払わねばならない点、時には進入規制を避けるため賄賂を納めねばならないという点やそれによる公務員の不正と腐敗などなどが独占の弊害だ。
政府は今でも進入規制を含むあらゆる独占を廃止することを政策の目標にして欲しい。そうすれば経済の成長は心配する必要がなく、文明は持続的に発達する。
|