張真晟(労働党統一戦線部出身の脱北詩人)
南北軍事実務会談が北側の不遜な退場で決裂(2月9日)した。わが方が天安艦攻撃、延坪島砲撃問題を会談の前提として主張し続けたら、北側が抗議して会談席を立って出て行った。出ろと言うと出て、北側がかっとなると無効化されるこういう非正常的な南北関係をもう一度全世界に見せた恥さらしである。
ところが、わが政府は、過去の南北対話とは違って、今回の南北軍事実務会談では言うべきことは言い、北側の言いなりにはならなかったという立場だ。一見尤もらしく見えるが、今回の南北軍事実務会談の決裂は、南北合作のショーではないかという気がする。つまり、国民が見る舞台では強硬な姿勢で自尊心を誇示し、裏では天安艦爆沈の前から準備した無条件の「首脳会談」を急いでいるのではないかという気がする。
政治とは元々そういうものだろう。私が平壌の「統戦部」で勤務した時も、過去の南北対話の歴史にそういう「敵対的協力」の事例を見て驚いたことがある。そうでないなら、李明博政府がなぜ延坪島砲撃で全国民の自尊心が傷付けられ、しかも北側が3回目の核実験を準備している今、あえて首脳会談の必要性を力説するのか理解できない。
G‐20首脳会談をソウルで開催した外交的成果を、南北首脳会談という対内的カードをもってレームダックを遅らせる、あるいは、南北首脳会談が近いことを暗示したいのか。私は左翼政権の10年間を失われた10年と言うはずだと信じた李明博大統領に尋ねたい。なぜ、事もあろうに南北首脳会談で左翼政権の10年間を5年も延長しようとするのか、と。
李明博大統領は、「…国民は(北側の)挑発には強力に対応し、南北が本当に平和を語り合えるツートラック(two track)を求めている...」と言った。この話は、北韓がわが領海に砲弾を撃ちまくっても金正日とはいつでも喜んで対面するということだが、それが果たして左翼政権10年間の無原則な対北政策と何が違うツートラックなのか? そして、過去とは違うと主張する挑発への対応原則も一度でもわれわれ国民に見せてくれたのか?
左翼政権10年と違う李明博式のツートラックができるためには、挑発への強力な対応と、北韓が対話に応じざるを得ない強力な外交を駆使せねばならない。事実、外交こそ南北首脳会談と比較できない程の相当な戦略的効果が期待できる。
5年間の単任大統領と3代目の世襲政権との対話は、設定そのものから非論理的だが、北韓を相手にして何かを引出せると錯覚し努力したら、それ自体が失策だ。だから、尚更安保と同盟というツートラックが切実なのだ。ところで、李明博大統領は、首脳会談を推進する場合、「…米国と事前に協力をするというような特別な手続きは要らないと思う….」とも言った。
これを反証するかのように、李明博政府が米国には知らせず、秘密裏に南北首脳会談を推進し、米国が南韓からでなく中国を通じてこの事実を把握して遺憾に思うや、元世勳国家情報院長が先週米国を訪問して、リアン・パネッタ米中央情報局(CIA)局長などに会って解明したという報道が出た。
その記事が事実なら、金正日はソウルに来られず、李明博政府が南韓の保守勢力の反発を意識して平壌訪問でなく中国での南北首脳会談を準備していると推測される。では、「6者会談」で外交的地位を固めている中国に、南北首脳会談の仲裁までを頼んでまで強行する底意が何か。
韓半島内で2度の南北首脳会談もその結果が惨めだったのに、北京での南北首脳会談を通じて果たしてわれわれ韓国が得られそうな政治的利益とは何かに対して熟考してみたのか。私の考えでは、南北韓に対する中国の政治的支配と影響力だけを助長し、韓米同盟は毀損されるだけだ。そして、南北首脳会談は、李明博政府とハンナラ党の政治的墓になるはずだ。
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