1週間後に迫った北韓労働党の代表者会議で金ジョンウン後継が決定されることがほぼ確実になった。金正日北韓総書記の再度の電撃訪中はこの問題に対する中国指導部の了解取り付けを目的とする行動とみてとれる。
「先軍統治」にまで到り、その先を展望することが困難となった北はいま、急いで大幅な現状変更を試みようとしている。健康不安を抱える金正日の後継体制づくりがまずそれである。昨年の憲法改正で最高機関としたばかりの国防委員会中心の体制から党中心の体制への後戻りを図ろうとしていることが次である。呉克烈―李済剛ラインの消滅にみられる軍強硬派の後退は先軍路線に一定の影響を与えるかも知れない。市場との最後の戦いとなったデノミの失敗は閉鎖された国家統制経済にも拘らず市場性が、逆に反発している現状を注目すべきだ。
毛沢東の孫は一介の軍幹部
しかし、北韓権力の世襲は民主主義的なプロセスによる南北統一の可能性を広げようとしている現在の韓半島の全体状況のディメンションからの退歩であり、韓半島の平和と民主主義、開放と発展、東アジアの開放と発展の観点から認めがたい。
血縁継承に反対する第1点は、いまの韓半島国家は封建領主国家ではないという厳然とした歴史的事実だ。封建領主は自己の領土と人民(農民)をそっくり血縁の後継者に譲ることによって命脈を保った。血縁継承は封建領主の国家観をほうふつさせる時代錯誤の行いだ。国家権力は国民・人民の負託によって与えられる統治機関である。人民主権の上に成り立ち、血縁主権とは本来的に無関係だ。血縁3代目に権力継承を行うことは北権力が血縁指導集団であることを示すものであり、北が近代の関門をまだくぐっていないばかりか前近代的な奴隷制度そのものだと言えよう。中国においては抗日闘争と共産党国家建設で絶対的なカリスマ性を誇示した毛沢東は文化大革命によって革命の続行を強行しようとしたが、悲惨な損害を招いて失敗し、改革開放路線に道を譲った。彼の孫は指導者の地位の継承とは関係のない一介の軍幹部である。中国は北の権力継承を認めるべきではない。
反対の第2点は、権力世襲は民主主義的な手続きを経ることのない権力交代であるため、主権者たる人民と権力との距離を広げ、主権者と権力代表の自同性を失わせることだ。その結果、国家権力と人民との距離がへだたり広がることによって政治的不安定をもたらし、統治コストが増大することだ。血縁継承はその不安を再生産するメカニズムとなる。権力不安定は南北関係の不安定を呼び、統一問題の解決を遅らせる原因となる。
北権力集団の血縁集団化はすでに限界にある。
北の革命正当性は終焉
北当局は抗日闘争の歴史を引いて、1945年以後の権力の正統性の根拠とし、1948年の人民投票を引いて韓国の政府樹立否定、自国の正統性を主張し、金日成・金正日政権の正統性を統一を達成するための革命課業の指導部であるとするところに置いてきた。
だが、北の革命論の正当性の主張は、1960年、韓国国民が4月革命を起こすことによって遮断され、その寿命を終えた。4月革命は韓国の発展・変革は韓国民自らの手によって遂行されることを明らかにした。その後の経済発展と民主化の進行はそれを証明している。4月革命後の北の対南工作、破壊活動は自らの独裁権力の存在理由を証明するため行われたというほかない。4月革命は北においても経験する必要があるだろう。
血縁継承の理由・根拠を「代を継いだ革命の継続」に置こうとする金正日政権の現指導部の南北統一観は明らかな時代錯誤だ。国際社会の民主化の大潮流から見ても、失笑を招く。
間近に迫った権力継承は在日社会にも影響を与える。党代表者会には朝鮮総連の代表が参加するとみられているからだ。継承作業は総連においても推し進められると予想されるが、断じて許すべきではない。
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