金成昱
北韓はこれ以上放って置けない。これは緊急な問題だ。北韓が支援ではなく、解放と救援の対象であることを教えてくれる切迫した事案がある。北韓住民の痲薬中毒の拡散だ。
北韓は70年代末から外貨稼ぎの手段として麻薬を生産・密輸し、80年代末からは共産圏の崩壊と食糧難などで経済が苦しくなるや、ケシの栽培を寧辺、長津、赴戦、咸興、開城などへ大幅拡大した。
北韓が麻薬で稼ぐドルは年間最小1千万ドル。韓国外交通商部の1998年報告書によれば、北韓は同年に麻薬密輸などの不法行為で1億ドルを稼いだという。
いわゆる「苦難の行軍」を経ながら、麻薬の生産・密売は一般住民の生計維持のための手段にまで発展した。阿片の吸入と金儲けに味を占めた住民が増えるに連れ「北韓は麻薬で滅びる」と言われるくらいだ。
「北韓民主化運動本部」(代表金泰振)が2010年5月発表した「北韓人権実態報告書」には、北韓の麻薬中毒実態が書いてある。この報告書は、2009年8月から12月まで韓国と中国で脱北者106人をインタビューした結果だ。
報告書は、「北韓住民たちが飢餓と生活苦から逃れるために選択したのが麻薬の服用である事実が今回の実態調査で明らかになった」と書いている。インタビュー内容を紹介する。
崔某(脱北者):「深刻なのは人々が『鼻で吸う』という形の麻薬をします。麻薬の効果は食べ物を食べなくても力が出るといいます。それでそれをやれば暫らくはお腹もすかず疲れることもなく気分が良いから、多くの人々が中毒されています。それがどんな経路で供給されるのか正確には分からないが、会社、農場、家庭主婦などが麻薬をやってみなぼんやりしています。皆がいつもぼんやりした状態で働き暮しています。」
鄭某(脱北者):「今北韓内の食料事情が非常に悪いため、多くの人々が麻薬で暮らしの辛さを凌いでいます。それで2005年には『麻薬禁止』の布告令がありましたよ。効果がありません。検察所の人々や取り締まりをする保安署の人々もみな麻薬をやるからです。」
<国境地域のヒロポン吸入者は全住民の70~80%>
自由アジア放送は2010年1月25日、「北韓の国境地域のヒロポン吸入者が全住民の70~80%に達しており、麻薬密売者の0.5~1.0%が麻薬に依存している」という北韓内通信員の話を報道した。各界各層の皆がやるから、ヒロポンをやったことの無い青年は、時代遅れ者として扱われ、仲間外れにされる状況とまで言われている。
北韓で麻薬は「賂物用」としても人気がある。いわゆる「ヒロポン賄賂」だ。脱北者たちは、「上下層区別なしに党、政、行政幹部らも麻薬の吸入を平気に思っており、出世または、各種の取り締まりを避けるためのわいろとしても麻薬を渡すことがすでに住民たちの中で生活化されている」と伝える。
<麻薬栽培に動員される子供たち>
深刻なのは麻薬に中毒される子供たちが増えていることだ。これは北韓体制の構造的矛盾に起因する。子供たちは「白桔梗」、「薬タバコ」、「外貨稼ぎ用薬草」などと呼ばれるケシの種まき、栽培、採取過程に動員される。大人たちは盗む可能性が高いが、子供であるほど盗む可能性が低いためだ。
ケシの生産に動員された子供たちは、まだ咲いていない花のつぼみを取ってかんで食べたり種をおやつに食べたりする。生アヘンを非常薬として使ったり、常習的に水に入れて飲んだりもする。麻薬に馴染んだ子供たちはますます麻薬に中毒されて行く。
下は、北韓人権市民連合の「北韓児童権実態報告書、王と呼ばれる子供たち(2009年刊)」に出る脱北者たちの証言だ。
「白桔梗組、偽装のためケシに白桔梗という別名を付け、最も地力の良い土地にケシを植えて育てた...7月には幼い学生たちまで総動員してアヘンの原液を抽出したが、いやな臭いで学生たちが倒れることも多くて畑に医療陣まで待機した...原液を搾った後の実に粟のような香ばしい黄色い種がぎっしり埋まって子供たちにおやつとして人気があり、アヘン中毒者が出た。」(2000年脱北したチュ・ソンハ東亜日報記者。)
「ケシを干したものを水に溶かして飲めば痛みを感じないため非常薬として使えるのでそう呼ばれた...中学生たちもケシから白い牛乳色のエキスを搾り取るのに動員された...幼い学生たちはただ薬草とだけ言われたため、まだ咲いていない花のつぼみを取ってかんで食べたりもした。」(2005年10月、咸鏡北道慶源郡から脱北した金・ジヨン)
「国境地域の住民の間で、麻薬が手のほどこしようもなく拡散しているため、早く止めなければ中毒者が途方もなく増えるだろう...知り合いの姉さん、兄さんらがヒロポンというものをやるのを何度も見ながら、それが悪いことであるのが分かるようになった。麻薬に手をつける人がますます増えるのが自然な社会的趨勢のようだ...幹部らもたくさんやっており、周辺の大人たち、友人の兄さんもするのを見たし、子供たちはそれをやれば気分が良いと平気で言うのをたくさん聞いた。」(2006年、咸鏡南道虚川郡から脱北したチョン・ジョンファ)
「2004年頃から一般住民たちの間でも麻薬を作ったり売る現象が非常に増えた.. 氷(ヒロポン)、「氷豆」、「アイス銃弾」と呼ばれる麻薬が主に咸興市から来る。咸興ではおカネのある人は全部麻薬をやると言えるほど...住民の間では咸興では豆腐を売るより、「氷豆」をやるというほどだ。」(2006年12月、咸鏡北道清津市から脱北した金・スヨン)
「会寧でも麻薬をたくさんやるが、学校を止めたか仕事のない人々が集まって一緒に麻薬をやる.. 学生たち中には中学校6年生が多い...氷(ヒロポン)は水に溶かして飲めば臭いもしないし証拠も残らないため取締りにかかっても大きな問題にならないが、燃やしてパイプで吸って捕えられればその場でどこかに連行される。」 (2007年5月咸鏡北道会寧市から脱北した金・オクファ)
いわゆる対北人道的支援をいう人々に訊きたい。同族の半分が金正日独裁によって殴り殺され凍って死んで飢えて死んで、子供たちは麻薬に中毒されているのに、その独裁に食糧を与えるのが正しいことか? それとも可哀想なあの子供たちを解放し救援するのが正しいことか?
*100年間「植民地状態」の北韓住民を解放する自由統一運動を支援しましょう。
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