金成萬(元海軍作戦司令官)
アメリカの韓国に対する態度が2009年秋から明確に変わっている。 オバマ大統領だけでなく駐韓外交官や駐韓米軍に至るまで韓国に対する好感を示しながらお世辞を吐き出している。
「韓米同盟は過去のいつの時より堅固だ。戦時作戦統制権が転換された後も韓国の防衛をアメリカが責任を負う。韓国人の両親の子供への教育情熱をアメリカ人は学ばねばならない。韓国の民主主義と経済発展は驚くほどだ。北韓の脅威が増えつつあるが韓国軍の能力は充分だ。韓国の原子力発電、高速列車、自動車産業への投資の成功」など等、いちいち挙げるのに息が切れる程だ。言論報道ばかりを見る韓国国民は、韓米同盟が堅固だと信じている。これは虚像だ。内面を注意深く見れば韓米同盟は急激に弱まりつつある。
なぜこうなったのか?
まず、韓・米が共有する価値に大きな差がある。
韓国は、国際社会が参加しているアフガンでの対テロ戦争に戦闘部隊を派兵していない。「開城工団」を通じて北韓政権に提供している年間3,000~4,000万ドルの現金は、北韓の大量殺傷武器の開発に転用され得る。韓国は、PSI(大量殺傷武器拡散防止構想)への全面参加を2009年5月に宣言しながら、国際海上訓練には参加していない。
二つ、韓国は韓・米連合軍司令部の解体(戦時作戦統制権の転換)を固守している。
韓米連合軍司令部は、平時は韓半島の戦争を抑制し、抑制に失敗した時は韓国主導の自由民主主義の統一達成を保障している。連合司令部は、韓・米軍が戦時に連合作戦を行うため準備された軍事指揮組織だ。だが、韓国側の執拗な要求で2012年4月に解体される。連合作戦をしないと戦争で勝てない。韓国戦争など、戦争史の教訓だ。
三つ、北韓に対する「主敵概念」を削除した。
韓国(国防部)は、2004年に北韓に対する「主敵」概念を削除した。「主敵概念」は、韓米連合軍司令部の作戦計画5027(全面戦争)と概念計画5029(北韓急変事態)作成の基盤になる重要な要素だ。 「主敵概念」のない戦争計画は沙上楼閣に過ぎない。だが、右派政権のはずの李明博政府でも未だ「主敵概念」を還元すべきだという動きが全くない。
戦・平時の韓半島防御に必須の駐韓米軍の10大軍事任務(JSA警備と支援任務、近接航空支援統制任務など)を韓国軍が全て引受けた。2004年8月~2008年9月の間に委譲された。韓国軍の韓半島防衛の役割を拡大するという趣旨で韓国が要求したものだ。アメリカの立場からは駐韓米軍駐屯の名分が弱まった。
五つ、韓国はミサイル防御網(MD)の構築に参加していない。
北韓の弾道ミサイルは差迫った現存する脅威だ。北のミサイルは核兵器や化学武器、生物武器を搭できる。韓国は自国の防御だけでなく、駐韓米軍、駐日米軍(本土と沖縄、有事の際韓国に投入)に対するミサイル防御にある程度寄与せねばならない。ところが韓国は北韓・中国・ロシアが反対するといってMDへの参加に消極的だ。自国の防御力もない。
アメリカの意図は何なのか?
アメリカは、2012年に韓米連合軍司令部が解体されるまで、韓国で反米情緒が表出されないようにあらゆる努力を尽している。このためアメリカ人は心にもないお世辞を吐き出している。アメリカは2008年4月~8月の「米国産牛肉の輸入反対のロウソク乱動」を見て、韓国社会の反米情緒がどの程度なのかを確認した。韓国政府当局の優柔不断な対処も見た。
当時、バーシュボウ駐韓米大使(2005.10~2008.9)は、2008年12月5日ワシントンの韓米経済研究所が主催した講演会で、在任期間中発生した米国産牛肉の輸入を反対する韓国民の示威が「疑う余地もなく自身の外交官生活の中で最も奇異で当惑した経験だった」と回顧し、当時韓国民の反感ため自分と妻がほとんど自宅軟禁状態だったと話した。それでアメリカは韓米FTA(2007年合意)の再協商が難しいとみて推進を先送りしているのかも知れない。
それから、ベル駐韓米軍司令官(2006.2~2008.6)は、離任式(2008.6.3)で「韓国はアメリカの持続的かつ信頼できる友邦であり世界で最も近い友人」と言いながらも、「同盟は政府の公約によって持続できるものでなく、ただ国民の意志によって持続できる」と力説した後、下手な韓国語で「一緒に行きましょう」と提案することで辞任の挨拶を終えた。韓国に対する残念な思いをやわらかい言葉で表現したものだ。
そして、アメリカは「連合司令部」が解体されると正常な韓米軍事関係の維持が難しいと判断している。連合作戦をしないため有事の際アメリカが軍事的に支援する方法がない。韓米同盟の核心は軍事同盟だ。軍事同盟の核心は、韓米連合軍司令部と駐韓米軍だ。なのに、これが瓦解し弱まっている。
しかも、北韓が二回も核実験に成功して軍事的に核武器保有国になった。また、弾道ミサイルの大量発射(2009年,22発)を通じて能力を誇示した。金正日の健康の悪化、経済破綻、後継構図の不安定などで急変事態も憂慮される。連合司令部が解体される2012年は、韓米の政治日程や北韓の強盛大国建設などで韓国には最悪の安保状況だ。金泰栄国防部長官もこれを確認した。
こういう安保状況の予測から、韓国は当然「連合司令部」の解体を中断し駐韓米軍の役割を拡大しなければならない。だが、李明博政府(国防部)は連合司令部の解体を「(韓米)政府間の約束」という理由で固守している。韓国国民980万人余りがすでに連合司令部の解体に反対する署名に参加した。予備役の将軍や予備軍の大部分が署名した。アメリカは、韓国政府(国防部)が多数国民の要求をこのように無視するのを見て非常に驚いているはずだ。アメリカはこういう現象を韓米同盟の弱化信号として解釈するかも知れない。アメリカは、韓国が1998年の左派政権執権以後長期間こういう政策を推進するから韓米同盟を再調整することにしたようだ。
アメリカは、韓国の親北・反米政権(1998~2008年)の時は韓国に韓国軍の海外派兵も公開的に要請し、連合司令部の解体の危険性を随時警告した。だが、2009年の秋からアメリカは韓国にこういう要請も警告性の発言も一切ひかえている。しかも、2008年と2009年に韓米首脳会談を通じて「21世紀の戦略同盟-同盟の未来ビジョン宣言」に合意したがこれに対する後続の措置がない。これがまさに韓米同盟の現住所だ。
それではどうするべきか?
韓米連合軍司令部の解体(戦作権転換)が65%の進度(2009.11基準)を示している。連合司令部の解体を直ちに中断し、韓米同盟の復元を急がねばならない。アフガンに戦闘部隊を派兵して正常な国家としての安保価値を国際社会と共有しなければならない。わが国民が立ち上がって、韓国軍に戦闘経験のできる機会を与えねばならない。
そうしないと、韓国は韓米同盟の瓦解を憂慮せねばならないだろう。そして、金正日の誤判による局地戦や全面戦も覚悟しなければならない。(konas)
写真は、韓米連合司令部の旗手団(上)、ソウルを狙った北のミサイル基地の例(中)、訓練のため釜山に寄港した米空母(下)。
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