冬を控え、北韓の食糧難が依然続いている。離散家族再会事業の再開にあたって北は「誠意を示せ」と韓国に食糧支援を求めてきた。そして10月26日、韓国はとうとう、トウモロコシ1万トンなど北韓に対する食糧支援再開を表明した。
「先軍憲法」下で支援は不合理
とうとうと言うのは、李明博政府は昨年5月、5万トンもの食糧支援を提案したのに北当局は拒否し、今年に入り、李明博政府を何度も非難したあげく、ミサイル大量発射と2度目の原爆実験を強行したからだ。加えて、核武器を担保に軍事統一戦略を進める先軍路線を「憲法」にまで明記したのに、である。金正日自らが独裁のため消尽した資源をいつまで人道という名目で外部世界が支援せねばならないのか。「6者協議」の再開のため金正日の暴走を助長することにつながる食糧支援を韓国民は簡単に承知しないはずだ。
統一部は「今回の支援はあくまで赤十字レベル」とした上で、「政府レベルの大規模な食糧支援は南北関係の状況などを見ながら決める」とした。つまり、トウモロコシ1万トン以外に、いわゆる「グランド・バーゲン」の一環として大規模な食糧支援を別に準備しているということだ。来年度の北韓関係予算は今年度比3割増で組まれ、食糧支援40万トン、肥料30万トンが含まれる。
だが、李明博政府の対北認識は正気なのか。と言うのは、今年の北側のミサイル発射や原爆実験には7億ドル以上がかかったと指摘されたが、これは北韓の今年度予算の実に20%に相当すると推定されているからだ。いくら支援しても北側がまた原爆実験を行えば、結果的には核武装の増強を助けたに過ぎない。
制裁が曝け出した金王朝の矛盾
北には東西、中央に名立たる穀倉地帯が展開する。昨年からは洪水などの自然災害も伝えられていない。国際穀物価格も今年は下落した。それなのに食糧難の知らせである。
10月1日発表された民間研究所の報告は、北の今年の食糧需給を推定で需要542万トン、供給486万トン、不足量56万トンとした。北韓の穀物生産についてウォッチャーは「肥料が不足し、機械化が遅れ、用水施設が足りない。病虫害も発生した。今年はよくない」という。
しかし北側の食糧難は、3代目世襲を目論む「金王朝」が人民を食べさせることには関心がないからだ。核ミサイルへの執念の十分の一の予算でも餓死は起こらなかったはずだ。外部世界からの援助も、金正日自らが招いた国連安保理はじめ国際社会による制裁の強化で激減した。北韓向け物資は各ルートで止まっており、制裁による北側の外貨収入源の遮断と物資獲得費用の増加は相当なものという。
特に問題なのは、配給制が崩壊して登場した「市場」で、食料価格が2―3倍に高騰し、コメ1キロが勤労者の月給と同じ2000北韓ウォンもする殺人的アグフレーション(agflation、農産品価格の暴騰)が起きていることだ。トウモロコシは1キロ1000北韓ウォンだ。北側当局の市場規制と制裁による物量供給減が買いだめ、買占め、売り惜しみを招き、価格高騰につながりかねない。そうなれば、市場で食料を調達する力のない弱者や辺境の住民などがまた最も苦しい立場に置かれることが懸念されている。個人や私企業を独立の経済主体として認めない経済政策や社会的統制にこうした食糧難の根本的原因があり、まさに金正日独裁が農業や人民に破滅的な制裁を加えているのだ。
したがって、金正日の「民族共助戦術」に負けて、国際社会の制裁措置を無力化する食糧支援を韓国政府が再開してはならない。北の年間不足量をほぼ支援することも視野に入れる李明博政府の人道的食糧支援は、現状維持次元の間違った支援でははく、北の核武器廃棄、北側に拉致・抑留中の人々の送還、北韓住民の人権改善と連繋させて国際協調の下に行うことを強く主張する。
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