趙甲済
憲法第72条は、「大統領は必要と認める時は外交・国防・統一その他の国家安危に関する重要政策を国民投票に附することができる」として、大統領の国民投票附議権を認めている。
ソウルと果川市にある行政府の約半分である9部・2処・2庁を、忠南内陸の「世宗市」へ移転して首都の機能を分割するのは、未だ戦争状態が終了していない韓国の安危に関する重要政策だ。首都の機能は国政指令塔の機能なのに、これが分割されたら戦時にどんな結果を齎すのか慎重な検討が必要だ。平和時も国家指令塔の分割による行政の非効率と国民の不便は深刻なはずだ。
「世宗市」を原案通り建設すべきか、全面再検討すべきかを置いて国論が分裂し、政治家たちも右往左往している。首都の分割は、国益の次元で扱わねばならない。忠清道民や特定政治勢力の立場で取扱う性格のものでない。道庁所在地を定める時は道民投票をするのが原則で、市や郡を統合する時も該当住民たちが投票する。首都の機能に重大な変化を齎す事案に対しては国民が最終的な決定権を行使せねばならない。
憲法裁判所は2004年、盧武鉉大統領が強行しようとした、「新行政首都」建設と偽装した首都移転に対して、「慣習憲法上、首都であるソウルを憲法改正の手順を踏まず移転することは、国民の憲法改正国民投票権を侵害するものだ」と判示して、違憲判決を下したことがある。違憲判決の理由を見れば、憲法裁判所が、首都移転や首都分割のような重大事案は、国会の憲法改正を追認または拒否する国民投票に準ずる主権者の決断を必要とするという判断があったのが分かる。
「世宗市」に首都機能の半分を与えるべきなのかどうかをめぐる論争は、通常的方法では解決できない。与党内の合意を導き出すのも難しいはずだ。特に、朴槿恵氏が原案の修正に反対したことで、李明博大統領は国民投票に回す以外には他の選択が難しくなった。
首都分割案を国民投票に附することは、正正堂々かつ民主的であり、後遺症をなくす効果がある。事案そのものが国民全体に問わねばならない性格だ。「大統領中心制」の下で、大統領にのみ与えられた国民投票附議権はまさにこういう場合に使わねばならない。
国民投票は早いほど良いはずだ。国会内で解決するのがほぼ望めないのに、この問題を置いて議論していては大統領の任期が終わるまで結論が出ない。かといって、大統領が押し通せば後遺症が長引くはずだ。国民投票附議権の行使は、李明博大統領の国政リーダーシップを強化する方法でもあるが、根本的には大統領中心制の大統領の権限であり義務だ。同時に、政治集団の党利党略を離れて、主権者である国民に国家利益の立場で決断を下せる機会を提供するものだ。大統領は国民投票の結果に対しても神経を遣う必要がない。その責任は国民が負うのだ。
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