―歴代大統領と親交が深いと聞いています。各大統領の指導者評をお願いします。
「全斗煥、盧泰愚、金泳三。この3人の大統領たちとは何かと縁があった。3人のうち、最も豪快な人物は全大統領だった。数年前、『金博士の家の冷麺が美味いと聞いたのでぜひ招待してくれ』と言われた。実際に招待したところ、50人を超す参加者名簿が送られてきた。家の中でこぢんまりとした食事会を開くつもりだったが、結局、我が家の庭がすし詰め状態になるほどの食事会となった。食事会には、全政権当時の実務者らがほとんど参加していた。帰るときには『ピンデトックがうまかったから少し持ち帰りたい』とも言われた。退任して20年が過ぎても側近たちを従えるカリスマ性と豪快さに驚いた。全大統領と同志だった盧泰愚大統領は対照的だった。盧大統領に忠誠を誓う同志は特にいないようだ。多少鈍感に思えるほど人間性は優れているが、指導者としてのカリスマ性には欠けている。金泳三大統領とは頻繁に会っていたが大統領になってからは連絡がなくなった。退任する直前、青瓦台に呼ばれ、かの有名な『金泳三カルククス』をごちそうしてもらった。ところが、私への第一声は『大統領時代、一銭たりとも得をしたことがないよ』だった。久しぶりに会ったら『元気か』などと尋ねるのが韓国式の挨拶であるはずなのに。『それなら、息子が得たカネは何だ?』と思いながらカルククスをすすり込んだことをはっきりと覚えている」
―では、李明博大統領はどのような指導者なのでしょうか。
「一言でいえば、怜悧な指導者だ。昨年夏、大統領が青瓦台の裏山から光化門のろうそくの光(米国産牛肉輸入反対集会)を見下ろしながら『朝露』という歌を聴き、感動したという。その話を聞き、呆れてしまった。この人はいったい何者かと疑った。ろうそくの火に感動してセンチメンタルになるのではなく『背後に反米親北勢力がいるようだ。スパイが幅をきかせているのだ』と考えるのが筋ではないか。『中庸』を掲げているが、左翼・右翼の区別すらないのに中庸が存在するだろうか。ところが、李明博大統領の北朝鮮に対する見方だけははっきりしている。外国を訪問した際『無条件的な対北支援は認められない』『北朝鮮の核開発に協力した黒幕がいたようだ』としている。大統領の言葉に、親北勢力はさぞや地団駄を踏んだことだろう」