趙甲済
経済の核心は暮らしの問題だ。法治の核心は(犯罪者を)監獄に入れる問題だ。安保の核心は死ぬか生きるかだ。安保は、体制と共同体を護るため命をかける集団があってこそ維持される。
北韓政権が、色々な不利な状況の下でも韓国と米国を同時に相手にして体制を維持する秘訣は、指導部が命をかけていることだ。韓国と米国の指導部は、北韓の威嚇に対し命をかけようとしない。つまり、軍事的対応をやろうとしない。戦争を想定すらできない。韓国と米国がいくら良い暮らしをし、国力が忠実でも、貧しい北韓が命をかけて打って出るのに対して命をかけて立向かわないと、北側に引きずられて行く。
韓国の歴代大統領の十人の中、北韓政権を相手に命をかける姿勢で対決した大統領は李承晩と朴正煕だけだ。韓国内「親金正日勢力」がこの二人を最も嫌う一つの理由も北側の戦略・戦術を見抜かれたことに対しての不満だ。
金正日をはじめ北韓指導部は、韓国政権を「太った豚」程度に見ている。駐韓米軍さえ撤収すれば、単独決戦では勝てると信じる。この信念は誤解である可能性が高いが、すべての戦争は誤算から起きる。
韓国と米国政府が、金正日に「お前がこのようにやり続けると命が危なくなる」というメッセージをはっきりと送れないと、そうする勇気もないと、北側は核爆弾と長距離ミサイルを保有した地位の既定事実化に成功するだろう。そうなれば、北韓政権は「痩せたオオカミ」になって、「太った豚」の韓国を食物にしながら生存するだろう。
豊かで自由な民主国家が共産独裁政権を倒せる秘訣は何か? レーガン大統領が示した成功事例がある。銃弾一発撃たず、悪の帝国を崩壊させた戦略の核心は、軍事力を盾に、お金と人権を槍として使うことだ。われわれの軍事力で敵の侵略を阻止して時間を稼ぐ間に、お金と人権と自由の風を北韓内部に吹き込み、体制を内部から変革させて自ら崩れるようにすることだ。
大韓民国の憲法第1、3、4条が命令する「朝鮮労働党政権の平和的解体」がまさにそれだ。安保のため命をかけたくなければ、お金を使って「風船(ビラ)」でも送り、金正日を国際刑事裁判所に虐殺および戦争犯罪の嫌疑で告発でもしなければならない。
英国のインディペンデント紙の中東特派員として、40年間数多くの特ダネを残したロバート・フィスク記者は、「文明を護るための戦争」という本の中でこういう文章を残した。
<神学(theology)対技術(technology)、自殺爆弾(suicide bomber)対核兵器(nuclear power)>
中東の反米原理主義者たちは、イスラム信仰で武装し、自殺爆弾攻撃を敢行することで、最新技術を基盤にしたアメリカの核能力と対等に立向かっているという話だ。中東のイスラム原理主義テロ団体らは、異教徒の侵略に対抗する聖戦で、命を捧げる人は死んだ後天国に行くと信じる。一部の中東国家の現実は、出口がないように見える。特に、パレスチナの人々や下流層の人々がそうだ。現実の苦痛から脱出する心理的動機を、聖戦意識から求めるため、自爆攻撃の支援者が後を絶たないのだ。人間爆弾よりもっと恐ろしい武器はない。
北韓の金正日政権も「銃爆弾」という言葉を使う。金正日一人を「決死擁護」するため、全人民は爆弾にならねばならないという意だ。金正日のいわゆる「主体思想」には「政治的生命」という概念がある。革命のため犠牲になれば、死んでも「政治的生命」を得て永生するということだ。
1987年、大韓航空機を爆破させて115人を死なせた金賢姫も、バーレーン空港で逮捕される時、毒薬アンプルを噛みながら、この「来世の政治的生命」に対して考えたと告白したことがある。
ベトナム戦で、強大な先端武器で武装した米軍が負けた理由も、革命の意志で武装した戦士らの力を過小評価したためだった。当時ベトナムの国防長官のジアプ将軍は「米軍が50万人を動員すれば、我々は数百万の戦士を動員できる」と言ったことがある。正規軍同士の対決だったら米軍が勝ったはずだ。正規軍と革命戦士らの対決だったから負けたのだ。
革命の狂信と宗教の聖戦意識(中世十字軍も含む)が、人間をして命を草芥のように捨てるようにさせる。これに対応する民主国家の軍隊は命を惜しんで武器に依存する。銃爆弾狂信徒らと対決している韓国が、如何なる必勝戦略を立てるべきなのか悩む時だ。
金正日が米国に立向かえる秘訣は、米国は5000人の軍人が死ぬ戦争も遂行できない国家だが、北韓政権は数百万人を犠牲にさせる覚悟があるからだ。韓国はこのような金正日と対決する過程で何人の犠牲を覚悟できるのか?
|