金成萬(KONAS)
テロとの戦争に能動的参加は当然、勝利する軍隊は即ち実戦経験が左右。
アフガンへの再派兵問題が国民的主要関心事になっている。ゲイツ米国防長官は,2008年3月27日、韓米首脳会談の調律のため訪米した柳明桓外交通商部長官と面談の席で「アフガンの情勢安定に韓国が支援する意志があれば歓迎する」という意を表明した。スチブンス(Stephens)駐韓米国大使指名者は、4月9日、韓国のアフガンに対する兵力派兵問題を協議する必要があるという立場を明らかにした。
スチブンス氏はこの日(4月9日)、上院外交委員会の認准聴聞会で、東アジア太平洋小委委員長の「韓国政府が,アフガンに対する米国の再三の兵力派兵要請に応じていない」という発言に対し、このように話した。スチブンスは、「私たちは、アフガンで必要なことが何か、韓国がどんな方式で寄与できるかに関して議論する必要がある」、「来週、李明博大統領のワシントン訪問でこのような問題が取り扱われると思う」と話した。これに対し、わが国防部は、「未だ派兵要請がなく、アフガンに再び派兵する計画もない」と明らかにした。
アフガンには現在多国籍軍(Coalition Force)57,250人が駐留し、対テロ戦争を遂行している。主要派兵国家は米国、英国、ドイツ、カナダ、オランダ、ポーランドなど20余の国々だ。この中には旧ソ連から独立した新生の小国も戦闘兵を派兵している。先月(3月)に開かれたナトー(NATO)頂上会談で、米国はNATO国家らに兵力の追加派兵を要請した。最近アフガン駐屯軍隊が増え続けている。現在の派兵規模は2年前に比べ二倍近く増えた。
韓国は、2007年12月14日東医部隊(医療)の11陣と茶山部隊(工兵)の9陣の将兵195人が全員帰国してから追加派兵がなかった。派兵された部隊は、たとえ戦闘部隊ではないが5年10ヶ月間多くの成果をあげた。だが、今回の撤収は政府が人質犯(テロ勢力)の脅迫に屈服し急いで決めたことだったので国際社会から多くの非難を受けている。また人質犯と協商し、巨額の身代金まで支払った誤った先例も残しながら我々のみ撤収したものだ。
他の国は残ってテロとの戦争を続けている。彼らは後で韓国の代わりに人質犯をすべて掃討したそうだ。盧武鉉政権の誤った国家安保政策により齎された失策だ。その間アフガンに延べ2,131人が派兵され、難しい条件の下多く貢献しながらも、国際社会から全く認定されない現実があまりにも残念だ。
李明博政府は、盧武鉉政権の誤りをよく調べ、米国から派兵要請がある前に国家の地位に相応しい意思決定を下すべきだ。戦闘兵力をなぜ派兵しなければならないかを考えて見よう。
まず、正常国家に与えられる国際的責任を全うしなければならない。
韓国は世界の13大経済大国であり9位の軍事力を維持している。テロ行為は人類共同の敵である。アフガンで遂行しているテロとの戦争は、国連の承認の下で遂行している軍事作戦だ。韓国は国連の会員国である。したがってテロとの戦争に能動的に参加することは極めて当然の道理だ。外国の要請によりやむを得ず派兵するのは正常国家の地位にもそぐわない。
それから、韓国は大分前、国際社会から大きな恩恵を受けた。これから子孫らが長らく返さなければならない借りだ。韓国は「6.15事変」(「韓国戦争」、1950-1953年)の時、21ヶ国の助けを受け、国家の消滅直前の危機から国を救うことができた。国連軍の旗の下、16ヶ国(米国、英国、カナダ、トルコ、オーストラリア、フィリピン、タイ、オランダ、コロンビア、ギリシャ、ニュージーランド、ベルギー、エチオピア、フランス、南アフリカ共和国、ルクセンブルグ)が戦闘部隊を派兵した。そして5ヶ国(デンマーク、インド、ノルウェー、スウェーデン、イタリア)が医療支援部隊を派兵した。
参戦した延べ人数は1,940,498人で、この中で米軍が1,789,000人で大部分だった。これらの国々は、もし北朝鮮が再び韓国を攻撃すれば国連軍の旗の下、直ちに参戦することを約束して韓国を離れた。米国は韓国との約束を堅く守るため2万8千人余りの米軍を未だ韓国に駐留させている。
二番目に、韓国軍の戦闘遂行能力を向上させなければならない。
李相憙国防部長官は、去る4月11日の全軍指揮官会議で、「Fight Tonight、すなわち、部隊は今夜直ちに戦闘が開始されても勝利できる部隊になるべきで、軍人はそれをなしおえられる戦闘専門家、専門の戦い屋にならなければならない」とで強調した。国防政策や軍事戦略を話すべき国防部長官が、ささいな戦術的次元を要求しなければならない現実を、我々国民は理解しなければならない。
ここ10年余りの間、誤った国防政策のため韓国の国防力はずっと弱化している。今も急速に弱化が進んでいる。将兵らの精神戦力はすでに荒れはてた。国防部が2004年、北朝鮮に対する「主敵」概念を削除してから軍人だけではなく、一般国民の国家観や安保観もそうである。北朝鮮側が2008年3月から露骨に核兵器の使用を威嚇(「灰の堆積」)し、艦対艦誘導弾の発射、北朝鮮戦闘機のMDL近所まで南下飛行の武力示威をしているのに、これに関心を持つ国民は殆どない。そのうち本当に戦争でも起こったら誰が戦うだろうか。国民皆が戦争を忘れて久しい。
李相憙国防部長官が強調した通り、戦って勝つ軍隊を作ることが言葉で容易にできるものではない。何よりも、近道は将兵らの戦闘経験だ。ところで韓国軍の将兵らは皆実戦の経験がない。反面北朝鮮軍の多くはイラン軍に編成され、イラン-イラクの8年戦争(1980-1988年)に参戦した。それで彼らは皆が「一当百」に鍛えられている。口癖のように銃爆弾(銃弾・爆弾)になるという。
国防部は今回の機会を活かし、将兵らに戦闘経験の機会を得るようにしなければならない。先進国の軍隊との連合作戦を通じ、戦闘教理も習得すべきだ。そして韓国軍と米軍の戦力の格差が大き過ぎて、効果的な連合作戦が困難な現実的問題も解決しなければならない。韓国軍はベトナム戦(1960/70年代)以後、外国軍(米軍など)と一緒に戦場で実際に共に作戦をしてみたことがなかったからだ。
三つ目、血盟の米国がおかれている軍事的困難を理解すべきだ。
米国は、現在アフガンとイラクで対テロ戦争を主導している。しかし、「韓米連合軍司令部」体制のため現地(戦場)に十分な兵力を送れずにいる。韓国の防衛のためだ。「連合司」の「作戦計画5027」の遂行に必須の米軍の増援戦力69万人(現米国軍事力の50%水準)が、韓半島の周辺(日本、沖縄、グアム、ハワイ、アラスカなど)に縛られているからだ。簡単に説明すると、韓国防衛のため米国はアフガンとイラク戦を早期に終結させることができないのだ。米国は現役が足りなくて、かなり前から予備軍を動員して戦場に投入している。2007年の言論報道によると、27才の若い米軍兵士はイラクに3度派兵されたと言った。
アメリカのこのような困難が分かりながら、血盟国家として手放していていいだろうか。米国が必要とする時助けず、もし韓国が侵略された時、米軍増援軍が迅速にくるだろうか。連合軍(国連軍)が再びくるだろうか。血盟とは血を一緒に流す時成り立つものだ。言葉だけの血盟は血盟でない。平時に血盟関係が維持されてこそ有事の際韓国の安保も保障されるのだ。このような国家政策は世界的な安保政策の大きな流れである。これから韓国は「韓米連合軍司令部解体(2012年4月)」計画の廃棄を前提とした再協商、米第2師団の韓国継続駐留の保障、龍山基地移転の仕上げなど韓米同盟と関連した問題が山積している。
李明博政府は韓米同盟の復元を大統領選挙の公約として国民に約束した。韓国民は大統領選挙と総選挙を通じこれを承認した。それなら政府はアフガンへ戦闘兵の派兵を急いで推進すべきだ。韓米血盟関係への復帰、韓国軍の戦闘力向上、韓国の国家地位回復の機会を逸してはいけない。政府の賢明な判断を期待したい。(KONAS)
金成萬(予備役海軍中将、前海軍作戦司令官)
|