趙甲済
貧しい国の指導者だった李承晩と朴正煕は自尊心の化身だった。特に、米国と北朝鮮に対することにおいてそうであった。朴大統領は、板門店で米軍将校二人を斧で殺した金日成に向かって「狂犬には棒が必要だ」と宣言した。李大統領は、韓日国交正常化を無理強いに勧めたアイゼンハワー米大統領に面と向って、「あんなけしからん人がいるのか」と叱った人だ。指導者の自尊心は、危機の時、国益を護り抜く原動力だった。
李承晩と朴正煕が統治した韓国は、貧しかったものの「痩せたオオカミ」のような印象を周辺国家に与えた。小さいが自尊心で固く団結した恐ろしい国だった。
全斗煥と盧泰愚もそのような国格を維持した。問題は、金泳三、金大中、盧武鉉のいわゆる「民主闘士」出身の大統領の時期だった。彼らは、同盟国のアメリカに対しては大言を吐き、大韓民国の主流勢力に対しては悪辣に攻撃的ながら、「主敵」の北朝鮮政権に対しては従順だったか屈従する姿を見せた。主敵が犯した拉致・テロなど反人類的犯罪に対して沈黙し、北へ拉致された国民や国軍捕虜問題に対しては何の関心も示さなかった。朝鮮王朝の「文民事大主義」が彼らによって蘇えった。彼らが代表した大韓民国は、良い暮らしをしても魂のない「太った豚」のような印象を与えた。特に、北朝鮮には甘く見え、食い荒らされて殴られるばかりの「(誰にも叩かれる)村の太鼓」になった。
金持ちの国の指導者の李明博大統領が指揮する政府は、昨日ブッシュ米国大統領が北朝鮮をテロ支援国リストから除外したことのに対し歓迎した。テロ支援国リストに載ることになった理由は、1987年11月、金正日の指令で起きた大韓航空機の爆破事件だ。その被害当事者の大韓民国は歓迎し、日本は反発した。地球上にこのような行態を示す国家指導部はないだろう。南太平洋のトンガも、アフリカのルワンダもこうはしないはずだ。国がいくら良い暮らしをしても、このような精神状態の指導部を持つと、必ず安保上の危機を招く。
警察が愚かにも殺人犯を釈放したら被殺者の父が歓迎声明を出したのと同様だ。その殺人犯は犯行を認定も、謝罪も、賠償もしなかった。釈放されれば被害者の家族らに報復すると念を押している。そのような者を庇う被害者の父は、神様も保護してくれないだろう。
李明博大統領は、大韓民国の国格を協会のレベルに落とした。李大統領の情けない対応をあざ笑いながら見守っているのが中国、北朝鮮、ロシアだろう。
「魂のない太った豚ら、取って食べても悲鳴も上げられない集団...」、こう思っているではないだろうか?
李明博大統領は、国民に対する報告義務を遺棄している。米国が北朝鮮に対してテロ支援国解除を決心することになった背景と韓国政府の考え、今後の対応、そして何より大韓航空機爆破事件の被害者115人の遺族らに対する措置などと関連し、対国民報告がなされるべきだ。彼は現代建設の会長でなく、大韓民国の大統領だ。人気取りの発言だけをやって不利な話は黙殺する権限がない。
主権国家の元帥が自尊心と品格を示さないと、国民が被害を受ける。あんな大統領が治める国の国民は勝手に取り扱ってもかまわないという考えが国際的に広がった時、韓国人はテロ集団のかもやターゲットになるはずだ。
建国60周年の記念辞の中で、建国世代と建国大統領、そして米国に対する感謝の言葉を一言も言わなかった李明博大統領のこのような行態は当然かも知れない。有り難みを分からない人は、怒る方法も分からない。主人と奴隷の決定的差は何か? 奴隷は言うべき事が言えず、主人は言うべき事を言う。
李大統領はキリスト教徒だ。キリスト教徒は個人の生命を地球よりも重く思う人々だという。金正日の指令で115人が死んだ。地球115個よりも大切な生命が消えた。このような金正日に対して怒る心や、このような人間生命を大切に思う心がないから、彼が導く政府から「テロ支援国解除を歓迎」という妄言が出るのだ。これは「テロを歓迎」という話であることが分からないか?
対外的で国家の権威や国民の安全を護り抜くことのできる指導者こそか、対内的で法秩序を維持できる。
*わが外交部のなすことがなぜここまで幼稚なのか? アメリカの「解除」措置を受け入れながらも、国民の立場から不満を表現することで記録に残し、国家的自尊心を保ち、遺族らを慰める方法があるのに、なぜ「無条件賛成」か「無条件反対」しか知らないだろう? 国の生存がかかった問題に対してさえ、悩みと考えが足りないから、幼稚園生もしない過ちを犯す。漢字文盲による韓国語能力の不足のせいか? 教養の不足なのか? 外交部職員らの給料は誰が出すのか? ブッシュが出すか、金正日が出すかか? 自尊心のない人間が絶対に行かないようにすべき役所は、外交部と大統領府だ。「植民地官僚」の根性で武装した集団は、核で武装した集団には勝てない。
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