韓国の出生数が増加傾向にある。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す「合計特殊出生率」も微増しているが、依然として世界最低水準となっている。同じく少子化が進む日本と比べても著しく低い現状にある。出生率を上げるため、韓国では企業がさまざまな支援策を実施している。
韓国国家データ処が2月25日に発表した2025年人口動向調査によると、出生数は25万4500人で、前年比6・8%増の1万6100人増加した。10年の2万5000人以来15年ぶりの最大値で、1970年の統計開始以降4番目の高水準となっている。
合計特殊出生率は2024年の0・75より0・05上昇した0・80となり、21年の0・81以来4年ぶりに0・8台を回復した。16年から8年連続で減少したあと24年に反騰し、2年続けて上昇した。
同処では「コロナ禍以降の婚姻数増と、主な出生年齢層である30代前半の人口増、出産に対する肯定的な認識変化が合計特殊出生率上昇の主な要因となった」と分析している。
国を挙げての社会問題である出生数を上げる試みには、企業も取り組んでいる。
■独自の奨励金や育休
大手建設会社の富栄グループは、21年から従業員に子どもが生まれた場合、1人当たり1億ウォン(約1080万円)の出産奨励金を支給している。同社は少子化が国家の存続に関わる深刻な問題であると捉え、企業が率先して解決に向けて取り組むべきと判断して制度化した。
建設・プロジェクト管理会社の韓美グローバルは、3人目の子どもが生まれた社員を入社年数に関わらず、即昇進させる制度を導入した。
LG電子は、育児休業の取得が難しい社員に対する支援として、「育児期勤務時間短縮制度」を導入している。最大2年間の育児休暇を取得可能となっている。「1年間は育児休業を取得し、残り1年は勤務時間短縮制度を利用」といった個別の事情に合わせた柔軟な運用ができる。不妊治療休暇については、法律上は年間最大3日間のうち最初の1日だけ有給扱いとなるが、独自に最大6日間を有給休暇として取得できる。
合成ゴムメーカーの錦湖石油化学は、独自の出産祝い金の金額を大幅に引き上げたほか、小学校入学の前後最大1カ月間の小学校入学育児休業を新設した。
ロッテ百貨店は韓国大手企業として初めて男性育児休職期間を3カ月に拡大。期間中の業務を担う代行者には最大60万ウォン(約6万5000円)を3カ月に分けて支給する。ロッテグループは17年から配偶者が出産した場合、1カ月の育児休業を男性社員に義務付ける男性休職制度を導入している。
■韓国だけが1人未満
企業とともに国や自治体もさまざまな取り組みを行っているが、経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国の中で、韓国の合計特殊出生率は依然として最下位となっている。OECDが23年の合計特殊出生率を基に分析した資料によると、韓国はフランスの1・66人、米国の1・62人、日本の1・20人といった主要国だけでなく、OECD平均の1・43にも大きく及ばない。OECD加盟国の中で1人未満なのは韓国だけとなっている。
ニッセイ基礎研究所の金明中・上席研究員は韓国企業の取り組みについて「少子化という国家的課題に対して、社会全体で向き合おうとする動きが加速している。出生率にどのような影響を与えるのか、動向に注目していきたい」としている。
■移民政策の現在
一方、こういったなか政府は「新出入国・移民政策」を2024年9月に発表し、移民受け入れ体制の強化を図っている。主な柱は、(1)高度人材の誘致チャネルの多様化(2)自治体・民間の需要を反映したビザ運営(3)移民者の社会統合強化(4)科学的・体系的な外国人材導入システムの構築などだ。
政府は移民を「一時的労働力」ではなく、社会統合を前提とした長期定着政策へ移行中だが、賃金抑制や雇用競合への懸念から受け入れ規模を適正管理する方向だ。半面、外国人労働者の失踪防止や社会統合プログラムの強化が課題となっている。
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