韓国フィンテックのスタートアップ支援
韓国のフィンテック・スタートアップの日本市場進出の動きが活発化している。韓国では2000年代初頭から官民を挙げて、金融(ファイナンス)とITテクノロジーを組み合わせて革新的な金融サービスを提供する産業を育成し、Kフィンテックとしてグローバル成長を促進するスタートアップ支援に取り組んできた。
その結果、スマートフォンで利用できるモバイル決済、国際送金、デジタル銀行、デジタル証券などを担う企業が続々と誕生し、グローバル展開に拍車が掛かっている。
モバイル決済の海外サービスは日本から
その先陣を切って、外貨決済フィンテック企業のTravel Wallet(トラベルウオレット)が25年12月から日本で外貨決済サービスに乗り出す。同社は昨年、日本法人を設立する一方、今年4月に日本、台湾などの海外市場で「割り勘分割決済」の技術特許を取得し、日本進出を準備して来た。
同社が初の海外進出先として日本を選んだ背景には、日本では近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展による電子決済市場の成長とインバウンド観光客の増加に伴い、PayPayなどのモバイル決済が普及し、スマートフォンでの割り勘分割決済の市場ニーズが高まると見込まれるからだ。
まず、日本でサービスを開始し、続いて来年上半期には米国市場への進出も予定しているという。
フィンテック・イノベーション基金で成長支援
韓国の主なフィンテック企業には、モバイル送金アプリからスタートし、銀行、保険、投資などの金融サービスを幅広く提供するToss(トス)をはじめ、ブロックチェーン技術を活用した国際送金サービスを提供するMoin(モイン)、簡易決済ソリューションを提供するCHAI(チャイ)などがある。
韓国政府はフィンテック産業を拡大、活性化させるため、20年にフィンテック・イノベーション基金を立ち上げ、20年から27年までの8年間で合計1兆ウォン(約1000億円)を投資して、スタートアップの育成と海外進出支援を行っている。
フィンテック・イノベーション基金は、韓国成長投資会社(KGrowth)により運営されており、創業期から事業拡大期まで企業の成長ステージに応じたフィンテック企業投資を行っている。
ソウルフィンテックラボから世界に羽ばたく
韓国政府はAI(人工知能)時代を迎え、インフラ投資を加速しており、ソウルにはフィンテック・スタートアップの約6割が集結していると言われる。その主要拠点はソウル市が汝矣島に設立したソウルフィンテックラボである。ここにはソウル市とハナ銀行がフィンテック・スタートアップの成長支援とグローバル進出に向けた業務協約に基づき設置したフィンテック・スタートアップのためのグローバルセンターがあり、育成と海外進出を支援する拠点となっている。
こうして生まれたKフィンテック・スタートアップには、日本の投資会社(DGダイワ・ベンチャーズ、グローバル・ブレイン)や金融機関(三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほ銀行)などが注目、交流を深めている。 |