韓国財閥が大型国内投資に乗り出す。サムスン電子、SKグループ、現代自動車グループ、LGグループなどといった各社が計800兆ウォン(約85兆円)以上を投じる。対米大型投資の影響で、国内産業の空洞化を懸念した韓国政府の要請に応えたもの。今後は、国内産業活性化に動き出した企業に対する政府の支援策が注目される。
韓国政府が16日に開いた「韓米関税交渉の後続民間合同会議」で、各社が投資計画を表明した。同会議には、サムスン電子の李在鎔会長、SKグループの崔泰源会長、現代自動車グループの鄭義宣会長、LGグループの具光謨会長、HD現代の鄭基宣会長、セルトリオンの徐廷珍会長、ハンファグループの呂昇柱副会長の7人が出席した。
李在明大統領は「対米投資が強まると、国内投資が減るのではないかと懸念する声があるが、対処してくれると信じている。国内投資にこれまで以上に力を入れてほしい」と要望した。
これに対し各社は前向きに回答した。
サムスン電子の李会長は「未来の技術開発のために全力を尽くす」と述べて、今後5年間で450兆ウォン(47兆9000億円)を投資すると発表した。直近5年間の投資額と比べて25%増で過去最大規模となる。
具体的には、平沢市に2028年稼働を目指した次世代半導体工場新設と、韓国南部に2カ所のAIデータセンターの設置。ほかに車載用電池工場、エアコン機器工場の建設も検討中としている。
これらの投資によって6万人の新規雇用創出を見込む。李会長は「国内で大規模な投資と人材の採用を進めていく」と明言している。
現代自は人工知能(AI)やロボティクスなどに今後5年で125兆ウォン(約13兆3000億円)を投じる。直近5年と比べて4割多く、過去最大規模となる。国内で製造する自動車の輸出台数を30年には247万台と、現在と比べ1割増に引き上げる。
SKはAI、半導体、エネルギー、バイオテクノロジー分野に28年までに128兆ウォン(約13兆6000億円)を投じる。LGは24~28年の5年間で投資を予定している100兆ウォン(約10兆6500億円)のうち60%を素材・部品・装備技術確保に充てる。
ほかにHD現代は今後5年間でエネルギー分野とAIロボット事業に8兆ウォン、造船海洋分野に7兆ウォンの計15兆ウォン(約1兆6000億円)を投じてデジタル転換と生産自動化技術適用を拡大する。ハンファは5年間で11兆ウォン(約1兆2000億円)を投資し、協力企業の売り上げを24年と比べ、30年には2・3倍に成長させることを目標としている。セルトリオンは年6000億ウォン規模の研究開発費用を27年までに1兆ウォン以上に増やし、3年間で4兆ウォン(約4300億円)の施設投資をする。
今回の会議は韓国と米国が13日に発表した関税引き下げと引き換えに米国に3500億ドル(約54兆8600億円)を投資する関税協定文書を受けて開かれた。
李大統領は国内投資の拡大を要請するとともに、政府支援も確約。新たな支援策として企業が発行する劣後債の購入などを検討する考えを示した。 |