東京大学と韓国・崔鍾賢学術院は21・22日、東京大学安田講堂で国際会議「東京フォーラム2025」を開催した。テーマは「Rethinking Capitalism:資本主義を問い直す多様性・矛盾・そして未来へ」。世界的な経済・社会の変動を前に、資本主義の持続可能性を多角的に検証する場として、国内外の有識者、若手研究者、学生が集った。
同フォーラムは、2019年に始まった比較的新しい取り組みだが、すでに国際的な注目を集めている。
第7回目を迎える今年は、韓国と日本の国交正常化60周年にあたり、日韓の知的交流を象徴する意義が大きいものとなった。
資本主義は、19世紀の産業革命以来、経済成長の原動力として君臨してきた。一方、気候変動、格差拡大、AIによる労働市場の変革など、現代の課題がその限界を露呈している。今回のフォーラムはこうした「多様性と矛盾」をキーワードに、資本主義を「問い直す」ことで、持続可能な未来像を描き出すことを目指すもの。単なる学術討論ではなく、アカデミアズムと社会の橋渡し役を果たすオープンなプラットフォームとなった。
21日は、オープニングリマークスから幕が開いた。
東京大学総長の藤井輝夫氏と韓国SKグループ会長の崔泰源氏が挨拶を述べ、全体像を概説した。
藤井総長は「資本主義とは何なのか。人間の将来に何を産んでいくのか。多様な観点を共有し洞察する機会としたい。日韓の学生たちにも議論の場を設けた」と話した。
崔会長は「過去10年間で社会的な枠組みが大きく変わった。資本主義におけるさまざまな問題が表面化してきている。だが、その問題を解決するスピードが、問題が起こるスピードに追いつかない。資本の定義、貨幣を中心とした現在のフレームワークを持続可能な社会にするために再設計していかなければならない」と話した。
その後、学者・識者による「基調講演」「プレナリー・トークセッション」と続き、パネルディスカッション1「民主主義なき繁栄『近代化論』の21世紀的再検討」が行われた。
最後にビジネスリーダーズセッションとして「新たな時代へ:持続可能な資本主義モデルの探求」が行われた。韓日のビジネスリーダーが現在の資本主義モデルの持続可能性について考察。資本主義モデルの再構築とは何か、また韓日がどうのように連携し、再構築に寄与していけるかを探った。韓日間は共通の課題が多いとし、「エネルギーシステムを構築し共有し共同貯蔵する」「高齢者医療の共同での取り組み」「韓日ベンチャーに対してファンドを設立」などの提案がされるなど活発な議論が展開された。
2日目は3つのパネルディスカッション「米国大学の危機、グローバルな高等教育の将来~学問と資本主義の関係を再考する」「これからの社会変革を編み出す~脱成長とウェルビーイング経済が描く『その先』の社会~」「宇宙資源と資本主義~制度・倫理・科学の視点から~」が行われた。そのほか、東京大学と韓国の学生による発表が行われた。数カ月にわたり「資本主義」をテーマに国際協働プロジェクトを実施。5つのグループの学生がこのプロジェクトにおける議論を通じて得た学びや気づきを発表。単なる議論の場に留まらず、行動喚起のきっかけとなった。
「最終セッション:明日への対話」が行われ、東京大学・理事・副学長の林香里氏、崔鍾賢学術院のキム・ユソク氏の閉会の挨拶で幕を閉じた。
多声的な対話はフォーラムの真髄だが、「東京フォーラム2025」は、単なるイベントではなく、未来を形作る知的実験室となった。参加者は、資本主義の矛盾を直視し、多様なアイデアを発表。未来は、問いから生まれる。
 | | | 開会の挨拶をする崔泰源SKグループ会長
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