11月25日現在、対ドルで韓国ウォンが1400ウォン台後半を推移し、下落基調が続いている。韓国経済の長年の弱点である通貨の脆弱性が露呈しており、1997年のアジア通貨危機や2008年のグローバル金融危機の記憶がトラウマとして残る中、輸入物価の上昇など悪影響も懸念される▼こうした中、外国為替当局は国民年金公団と会合を開き、為替対策を議論する方針だ。国民年金は巨額の海外資産を保有しており、その多くがドル建てのため、運用戦略の見直しにより為替市場の安定化を図る火消しが期待されている▼具体的に、海外投資比率の調整や為替ヘッジの強化を通じて、ウォン高方向への圧力をかける狙いがある。だが、事実上、個人投資家の海外資金流出を抑えられない政府が、影響力の強い公的年金に頼るという形になる▼このアプローチには大きな懸念が伴う。国民年金の基金は約1322兆ウォン規模で、うち44%が海外資産だが、為替介入が中長期的な運用収益を低下させる恐れがある。そもそも政府介入は、基金の独立性を損ない、収益悪化を招きかねない。韓国政策金利が米国より低く、企業・個人によるドル需要が強い中、年金活用は基金を消耗させる可能性が高い▼海外の年金基金が運用独立性を重視するのは、こうしたリスクを避けるためだ。現在の為替水準は過去の金融危機を想起させるが、経常黒字継続や海外資産超過という点で状況は明らかに異なる。短期的な為替操作より長期的な視点で本質的な解決策を模索したい。 |