今年4月の釜山国際短編映画祭で観客賞を受賞するなど、国際的に評価されている韓日合作短編映画『国道7号線』は、秋田県で生まれ大学から渡韓、韓国映画を学んだ全辰隆監督の作品。祖母のキョンジャ、壮年の息子ヨンホ、大学生の孫娘ナナの3世代に渡る在日家族の精神史を描く。全監督、吉原裕幸プロデューサー、主演兼プロデューサーの朴昭熙さんらに作品に込めた思いを聞いた。
『国道7号線』冒頭の描写。ヨンホが母親のキョンジャと経営してきたパチンコ店の店じまいを決意するシーンから物語が始まる
主演のヨンホ役とプロデューサーを務める在日3世の俳優・朴昭熙さんは、「中年世代の”宙ぶらりんな存在”であるヨンホを演じたかった」とし、「差別を直接的に受けてきた我々の親世代と、韓国が憧れの存在になった4世のような次世代の狭間で、葛藤を抱えた存在が前を向いて歩き出せる点にこの作品の魅力がある」としている。
在日3世のプロデューサー吉原裕幸さんは、「在日映画は暗いイメージが強いが、全監督からこの企画を聞いた時に、新世代だから描ける軽やかさを感じた」とし、「在日3世の当事者同士で作り上げていくことが心地良かった。出品された様々な映画祭での非常に好意的な反応を受けて、長編実現に向けて邁進していきたい」と語った。
全監督によると、「会いたい人に会いに行ける世の中が来て欲しいとメッセージを込めてこの映画を作った。メインキャラクターの3人を通じて、世代間の分断、家族が再びつながり合う過程を描きたかった」という。
全監督は「高校卒業後に渡韓し、本国で暮らし韓国語で生活するようになれば”在日韓国人”から”在日”が取れると思っていたがそうはならなかった。アイデンティティークライシスを経験したが、なりたい自分のままでいていいという自信にもつながった。本作を通じ、分断問題に関心を持ち、分断が加速する社会に対して行動する世の中になって欲しい」としている。
写真右から、主演兼プロデューサー朴昭熙さん、全辰隆監督、吉原裕幸プロデューサー。在日3世の彼らが主軸となり制作した『国道7号線』は今年4月の釜山国際短編映画祭で観客賞を受賞した
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映画を鑑賞した郭玹瑀・在日本大韓民国青年会東京地方本部会長は、「最も近く、遠い存在でもある家族同士が、世代や国境を超越し歩み寄ろうと努める描写から、一時代を生きる個人ごとの人生の大切さを学んだ」としている。 |