先月21日、李在明政権の特別検事チームが北韓に対するドローン浸透作戦を調査するとして、烏山空軍基地を押収捜査した。大きな波紋が広がっている。
烏山空軍基地の中央管制レーダー施設は米宇宙軍と空軍が対北・対中監視を遂行する核心施設である。トランプ大統領は報告を受け、「What the duck(くそ! なんじゃそりゃ! なんてこった!)」と激怒した。当日、ルビオ米国務長官は魏聖洛安保室長との会談を取り消した。4日後にはバセント財務長官が仁川空港に到着した経済副総理に会談を取り消すメールを送った。会談の取り消しは韓国に対する警告メッセージとみられる。
米国は今回の押収捜査を情報漏えいや軍事機密侵害とみなし韓国軍との情報共有を遮断、烏山基地の共同運営を縮小する可能性もあるとした。そうなれば、韓国軍は盲目になる危険性にさらされることになる。すでに烏山空軍基地の機密が中国に渡ったとの懸念がホワイトハウスから出ている。
韓国外交部は米国の敏感な反応に閉口、大統領室は沈黙している。メディアもこの事件について報道したが、それらの記事は削除された。一方で、先月21日にトランプ大統領の側近でアメリカ優先主義政策研究所(AFPI)のフライツ副所長が韓米議員連盟の韓国議員らと会談した席で、「尹錫悦前大統領に対して不当な待遇を続ける場合、座視しない」とした。時代精神研究所チャンネルの解説が説得力があり、共有しておきたい。「敵は海を渡ってこなかった。すでに我々の内部に入り込んでいる。今は体制戦争の最終段階だ」。
尹前大統領はなぜ中国から排除される標的になったのだろうか。米国のFOXニュースで衝撃的な記事が報道された。
中国共産党にとって、尹前大統領は必ず排除しなければならない戦略的脅威だった。尹前大統領は就任直後から韓・米・日3カ国の安保協力を強化した。台湾海峡問題についても明らかに自由陣営の立場に立っていた。
米国の保守系シンクタンク、マンリー研究所のバルチ研究員は、「尹前大統領の外交安保路線が中国の北東アジア戦略に致命的な脅威となった」と指摘。FOXニュースとマンリー研究所は、自由陣営に警告を発している。また、「中国共産党は長い間育ててきた韓国内の従中・親中勢力を通じて、尹前大統領の排除に成功した」とした。
中国はここ数年間、特定の政治家を育ててきた。この過程で韓国の政治家たちの弱点をつかみ、非公式的な政治資金の提供を通じ抱き込み、政策決定まで掌握した。THAAD配備反対、反米・親中発言をしてきた政治家らは中国がこれまで育ててきた国内政治勢力の実体だ。韓国の2度の総選挙で繰り返された選挙不正は、中国共産党が直接介入して実行した工作だった。
実際のところ、2020年・24年の総選挙は民主党の一方的な圧勝に終わった。QRコード操作、事前投票操作、世論調査操作など数多くの疑惑が提起されてきた。国内の特定政党と中国共産党が結託した不正選挙で立法府を掌握、司法を揺るがし結局は現職の大統領まで排除した事件は政権交代とは言えない。政権奪取であり、政権強奪だ。
朴槿恵元大統領に続き、尹前大統領まで排除された時点で、中国はすでに2人の親米大統領を除くことに成功した。現在、大韓民国は静かな体制戦争中である。
この戦争が、最後の局面で生き残るか、消えるかの瀬戸際まで来ている。彼らは天文学的な金銭をばらまいてメディアを掌握、裁判官を買収し、親中政治家を育てた。ついに選管委を丸飲みし、大韓民国の選挙を操作した。
北韓の金正恩総書記が叔父に当たる張成沢氏を処刑した理由は、彼が中国式の改革開放を進める親中派だったからだ。金正恩氏は「日本には百年の恨みがあるが、中国には千年の恨みがある」と言及している。北韓がウクライナ戦線に兵力を参戦させた理由も、北露同盟で中国をけん制することが主な目的だ。
北韓は、6世紀に隋・唐による韓半島侵略を撃退した高句麗の末裔という自負心が強い。高句麗は南の百済・倭と連合し、唐を打ち負かした。遠い強大国と同盟を結び隣国の強大国を牽制する「遠交近攻」「勢力均衡」が古今東西を問わず、安保の鉄則・歴史の教訓という事実を再認識できる。
高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『国家情報戦略』(佐藤優共著、講談社)、『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。 |