韓国教育財団碧〓奨学生としてIEビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得。現在、アマゾンジャパンで動画配信サービスの宣伝マーケティングを担当している。
アマゾンにはグローバルな人材が集っている。英語でのコミュニケーションスキルはもちろんのこと、多様なバックグラウンドを持つ人材と仕事を進めるマネジメント能力や戦略的思考は、MBAで身に付けた。
大学卒業後は一貫してエンターテインメントビジネスに関わった。その後MBAを志し受験して合格したが、結婚のために一時見送る。出産ののち仕事に復帰し、育児をしながらキャリアを積み上げていった。
公私ともに忙しいなか、MBA取得への思いが再び湧き上がってきた。そんなとき、オンラインと対面のハイブリッド講義のMBAプログラムを提供するスペインの首都マドリードのIEビジネススクールの存在を知る。同校を志したのは、起業家育成と多様化を重視したプログラムが高く評価されていたからだ。
しかし育児をしながらの生活で金銭的な不安があった。ちょうどそのころ、碧〓奨学基金のことを知る。学資の問題もそうだが、在日として次世代への懸け橋となるという同基金のミッションに賛同したことと、支援を受けて同胞コミュニティーに還元したいという思いも重なり応募した。
支給が決まったときは「グローバルに活躍し、社会に貢献する人材になりたい」と決意を新たにした。
コロナ禍の2021年2月に開講し、日本にいながらオンライン受講するとともに、マドリード現地での対面授業を育児と両立させる。
同MBAでは100以上の国・地域からさまざまなバックグラウンドを持つ学生を集めているため、授業や課題からの知識だけでなく、グループワークを通じて得るものも多かった。リーダーシップを学べる貴重な体験もできた。
その間も就学前と小学校低学年の2人の育児をするとともに、仕事もこなしながら受講を続けた。世界各地からの学生で編成されたチームは、時差の影響で深夜、早朝にミーティングをすることもあり、睡眠時間を削って研究課題に取り組むなど、自身の体力の限界を超えるような思いもしたが、タイムマネジメントのスキルが鍛えられた。
卒業式はマドリードで開かれ、支え続けてくれた家族とともに出席。クラスメイトと感激の初対面を果たすとともに、家族とマドリードの街中を巡った。
「MBAでの学びは大きな財産になった」。実はMBAの学友の紹介で、現在在職しているアマゾンジャパンに転職を果たす。世界的なグローバル企業での業務を続けるにあたってはMBAで身に付けた経験が生きている。
次のステージも見据える。MBAやこれまでの仕事での経験を生かし、将来はアジアのコンテンツビジネスのグローバル展開や、仕事と育児の両立に悩む女性への助言・指導をする「メンタリング」なども行っていく。
後に続く若い人に対して「子育てをしながらMBAを取得し、キャリアアップできることを示すケーススタディーになることで貢献したい」と自身の体験を伝えようとしている。
碧〓奨学基金の意義について「学資のサポートだけでなく、在日同胞同士のネットワークを得る機会となった。実は同胞同士が集まるコミュニティーは少ない。同じ志を持ち、奮闘している同胞を知ることは励みになった」と評価している。
現在学んでいる奨学生やMBAを目指す人に対しては「自分の目標に向かって努力する、かけがえのない時間を大切にしてほしい。MBAは視野を広げ、視座を高めてくれたものとなった。意欲と関心があればトライしてほしい」とエールを送っている。
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