北韓のビットコイン保有量が米、英に次ぐ世界3位になった。ハッカー集団を動員して不正に取得した疑いがある。窃取した暗号資産はマネーロンダリング(資金洗浄)したうえで、核兵器開発などに使用していると思われる。国連安保理制裁委員会のほか、韓国国家情報院、米連邦捜査局(FBI)なども、北韓の関与について独自の調査結果を発表しているが、具体的な対応策は進んでいない。
北韓の「ラザルス」
世界最大級の暗号資産取引所であるバイナンスが運営する「バイナンスニュース」と、暗号資産データ提供企業のアーカムインテリジェンスなどによると、北韓のハッカー集団「ラザルス」は現在約1万3562ビットコイン(BTC)を保有していると推定されている。約11億4000万ドル(約1700億円)に相当する。
世界首位の米国の19万8109BTC、2位の英国の6万1245BTCに次ぐ世界3位となっている。北韓の保有量は、法定通貨として導入したエルサルバドルの6117BTCのほか、豊富な水力を活用した発電でマイニング(発掘)を行ったブータンの1万635BTCを上回っている。
世界3位の暗号資産取引所のバイビットが先月ハッキングされたことによって、北韓の保有量の急増につながったとみられている。窃取された暗号資産の大部分はイーサリアムだったが、相当数をビットコインに交換したとみられる。
現金化に至らず
これに関連して自由アジア放送(RFA)は13日、米国のサイバーセキュリティー専門家の見解として「北韓はイーサリアムをビットコインに交換することには成功したが、まだ現金化には至っていない可能性が高い」と報じている。
欧米各国は北韓政府が多数のハッカーを養成しているとして非難している。北韓はサイバー犯罪を核開発の資金源にしているとみられる。米当局によると、ラザルスは北韓ハッカー集団でも特に強力で、主要情報機関の一つである「偵察総局」のサイバー作戦部門が管理し、2007年から活動している。
すでに昨年上回る
北韓が関係するハッカーの暗号資産窃取は昨年、前年の2倍以上に増えて13億4000万ドルに達し、全体の約6割を占めたとチェーンアナリシスの研究者は指摘。だがバイビットへのハッキングにより、今年の窃取額は昨年を既に上回った。
韓日米3カ国を中心に暗号資産の窃取防止のための新たな組織が立ち上がったが、対北制裁状況を長年監視してきた国連安全保障理事会の専門家パネルが昨年、ロシアの拒否権行使によって活動停止。国際的な足並みの乱れが北韓ハッカーの暗躍を許している。
攻撃防御は困難
駿河台大学経済経営学部の八田真行教授は「個人的には、攻撃側が圧倒的に有利でサイバー攻撃を防ぐことは困難」としたうえで、「例えば米FBIなどは、窃盗グループに紐づけられたアドレスを公開するなどして、現金化を難しくしようとしている」と対抗策について語るが「暗号資産のマネーロンダリングを請け負う事業者もあり、同事業者を報奨金狙いでデータ分析して追い詰める賞金稼ぎもいるなど、米西部開拓時代のような混沌とした状況」と分析している。
暗号資産のひとつであるビットコインのイメージ |