働き方の多様化が進む中で、「ワーケーション」という言葉が注目を集めている。ワーケーションとは、ワーク(Work)とバケーション(Vacation)を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地で休暇を楽しみながらリモートワークを行う働き方を指す。言葉が先行し実態が見えてこなかったが、韓日で具体的な取り組みが始まった。
働き方の多様化進む
一般社団法人日本ワーケーション協会は、韓国・大象グループ、ホッパーズ、宮崎県日向市とワーケーション連携協定を締結したと発表した。
同協定は、韓国で働く大象グループの社員が一定期間、日向市で勤務しながら現地の業務環境を体験できるワーケーションプログラムを提供するもの。地域公共価値の共同創出や韓日相互地域および企業交流の拡大、課題の解決や連携強化を図ることを目的としている。
同協会は、大象グループとの円滑な「グローバルワーケーション」の運営に向けて、韓国においてワーケーション運営の中間支援を行うホッパーズ、日向市を含めた4者による連携協定を7日に締結。韓日相互地域及び企業交流の拡大、相互の課題解決等を図るため、ともに連携して取り組んでいくことで合意した。
日向市は、2020年から国内企業向けにワーケーションを働きかけてきたが今後、デジタルノマド(訪日インバウンド)誘致施策を融合させた「グローバルワーケーション」を推進し、国内外の企業・個人にとっての「ワーケーションの聖地」を目指す。
一方、日本ワーケーション協会は、20年の創設以降、ワーケーションの普及に向けて事業活動を進めてきたが、23年には韓国観光公社と連携協定を結び、近隣諸国との協力を進めている。
コロナ禍をきっかけにテレワークが急速に普及し、その延長線上としてワーケーションが注目されるようになった。韓日政府や自治体もこの動きを後押ししてきたが、「ワーケーション」という言葉だけが先行し、実像が見えてこなかった。
日本では観光庁が20年7月の観光戦略実行推進会議でワーケーションを新たな観光戦略として提案した。韓国ではデジタルノマド文化の浸透とともにワーケーションが注目された。24年1月1日から導入された「ワーケーションビザ」は、外国人が最長2年間韓国に滞在し、リモートワークを行うことを可能にする制度であり、ワーケーション推進の象徴的な政策と言える。
韓日のワーケーションには共通点と相違点が存在する。共通点としては、両国とも少子高齢化や地方の過疎化といった社会課題を抱えており、ワーケーションを通じて地方創生を図ろうとしている点が挙げられる。一方で、相違点も明確だ。日本では企業や自治体が主導し、国内労働者の働き方改革と観光振興を両立させるアプローチが中心であるのに対し、韓国では外国人向けのビザ政策を通じて国際的な人材流入と地域経済の活性化を目指している。
今回締結された協定は、日本と韓国の企業・自治体が協力し、ワーケーションを通じた地域活性化や国際交流を進める画期的な事例である。ワーケーションが単なる流行語に終わらず、持続可能な働き方として根付くために今後、韓日がどのようにこの新しい働き方を育てていくのか、注目が集まる。
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