韓国のZ世代「2030」と呼ばれる若者は、男女による政治的志向の違いが顕著だ。尹錫悦大統領の弾劾問題に対しても、男性は反対派、女性は賛成派に偏っている。他の年齢層では性別による政治的志向にさほど違いはない。この世代の人口比率は決して高いとは言えない半面、白黒を分ける場面でジェンダーによる葛藤が大きい2030世代の存在は、世論の行方を左右するカギとなりうる。 (ソウル=李民晧)
昨年12月14日、ソウル汝矣島で尹錫悦大統領の弾劾賛成集会が開かれたが、3人のうち1人が「2030」女性で、全参加者の27・1%に達した。この集会に参加した「2030」男性は9・9%に過ぎなかった。これはソウル市と通信会社KTが共同で行った「生活人口データ」を分析した結果であるため、統計的にも有効といえるだろう。
一方で、正反対の状況も見られた。今年1月19日、ソウル西部地方裁判所で発生した騒動により逮捕された90人のうち、46人が「2030」世代だったが、そのほとんどが男性だった。尹大統領の拘束令状を発布した裁判所に激怒した若者たちは男性だったというわけだ。
「2030」世代の男女における政治志向の違いは、世論調査のデータでも確認できる。韓国ギャラップが実施している定例調査によると、2月第2週から第4週の政党支持率は、18~29歳の男性が民主党14%・国民の力36%、18~29歳の女性が民主党39%・国民の力14%、30代の男性が民主党29%・国民の力36%、30代の女性が民主党48%・国民の力23%という結果になった。
要するに、18~29歳の男性支持率は与党が36%・野党が14%であり、18~29歳女性は与党14%・野党39%という結果だった。他の年齢層においては、性別による政党支持率の差は5%前後に過ぎない。
2030世代は、いわば「男は火星人、女は金星人」というように真逆の政治志向を示していると言えるだろう。
男性の「逆差別」に不満
男尊女卑と呼ばれる男性中心の社会構造は崩壊して久しい。「男女平等」の思考が定着した韓国社会だが、今なお旧態依然とした女性優遇の支援策は続いている。
これに対し、2030の男性たちは「同世代の女性だけに『女性優遇』『性差別支援』などの政策を行うのは不公平だ」と感じている。
男性のみに課される徴兵制は喪失感と差別を招き、事あるごとに問題提起がなされている。軍隊に行っても特になんの恩恵も受けられないのは「逆差別」であると怒りを露わにしているのだ。「2030」世代のジェンダー格差は少子化問題にも悪影響を及ぼしていると言える。
政争に利用される男女格差
一方で、2030世代の人口比率は他の年代に比べて決して多いほうではない。
しかし、白黒をつける戦いにおいては、ジェンダーによる価値観の違いが著しい「2030」の声は、世論の行方を占う重要なカギとなる。先の大統領選挙で、尹錫悦候補と李在明候補はジェンダーの特性を利用した。尹候補は女性向けの支援を管轄する「女性家族部」の廃止を公約に掲げ、「2030」男性の票を獲得。対する李候補は20代の女性活動家を党代表に迎え入れて対抗した。
しかし、この世代においても男女の共通点は存在する。それは無党派が多いという点であり、20代は40%、30代は25%に達している。
*「2030」世代とは、現在20~30代に該当する、韓国のベビーブーム世代の子どもたちを指している。個人主義性向が前の世代より強く、携帯電話のない生活を想像できない世代とも言われる。男女で政治的志向が顕著に異なる特徴もある。
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