国際秩序が変動し、AI(人工知能)をはじめとする技術の進化が加速する現代において、幸福度の定義もまた変化している。かつては物質的な豊かさや安定が幸福の基準とされがちだった。現在、日常生活は便利になり、情報へのアクセスも容易になった一方で、過剰な情報や社会の分断が顕在化している。ウクライナ戦争や中東紛争など国際情勢は混とんとし、韓国でも政局が揺れている。そういった社会状況下で韓日国民は幸せをどう考えているのか。
幸福度や生活満足度は、個人の主観的な幸福感や社会全体の生活の質を測る指標である。
国連は『世界幸福度報告書』(World Happiness Report)、OECD(経済協力開発機構)では『より良い暮らし指標』(Better Life Index)などの報告書で各国の幸福度や生活満足度を評価している。
国民性、文化、幸せに対する概念などが異なるため、アンケート調査が必ずしも正確な結果を反映するとは限らないが、一つの指標としては重要だ。
日本と韓国は、世界を代表する経済大国であり、先進的な技術や文化を有している。だが、両国は経済的な成功にもかかわらず、国民の幸福感において欧米の先進国に比べて低い位置にランクされることが多い。
両国の幸福度を国際的な指標から考える。24年の「世界幸福度報告書」によると、日本は143カ国中51位(スコア6・232)、韓国は52位(スコア6・503)で、ほぼ同水準だ。
OECDの「より良い暮らし指標」でも同様の傾向が見られる。23年のデータでは、日本人の生活満足度は平均6・1(OECD平均6・7)、韓国人は5・8で、いずれも加盟38カ国中、下位にランクされる。
特に韓国は23年に6・5を記録した後、24年は低下し、32位に転落した。
■韓国:社会的な競争の激しさがストレスに
韓国は、「漢江の奇跡」と称される経済成長を経て、昨年度のGDP(国民総生産)は日本を追い越した。KPOPや映画といった文化的輸出も盛んで、生活水準は高い。医療やインフラも充実している。
韓国の場合、社会的競争の激しさが「幸福度」の低下の大きな要因として指摘される。
教育熱は世界的にみても高く、受験戦争や学歴偏重が強いプレッシャーを与えている。例えば、21年の統計庁データでは、19歳以上の34・1%が「社会的孤立感」を感じており、特に高齢者で顕著だ。また、自殺率の高さも深刻で、OECD加盟38カ国のうち、人口10万人あたりの自殺者数を示す自殺率は27・3で最高値。この数字は、経済的成功と幸福感のギャップを象徴している。年齢からみる生活満足度は40代が6・6といちばん高い一方、60歳以上は6・2だ。
韓国統計庁が2月24日に発表した『国民の暮らしの質報告書』でも同様の傾向が示されている。
年齢別では19~29歳と30~39歳はそれぞれ6・5点だった。40~49歳は6・6点だった一方、60歳以上は6・2点で、生活満足度は相対的に低かった。
■日本:非正規雇用増大による将来不安
日本は、韓国とは逆に高齢者の生活満足度は比較的高い傾向にある。『世界幸福度報告書2024』では、60歳以上の幸福度ランキングで日本は世界的にも上位だ。一方で若者(30歳以下)の幸福度は低い。
現在、60歳を超える世代は高度経済成長やバブルを経験した。相対的に十分な年金も支給され経済的な恩恵を受けているといえる。片や、若い世代は就職難や非正規雇用増大の影響を受けた。
今後の経済的不確実性や孤立感が、若者の生活満足度を押し下げているといえるだろう。
両国は戦後の復興から短期間で先進国入りを果たし、物質的な豊かさを手に入れた。しかし、それが精神的充足感に必ずしも結びついていない。不透明感を増す国際秩序の中にあって、未来に対して希望を抱ける社会を構築できるかという点も重要になってくるだろう。 |