韓国検察は1月26日、尹錫悦大統領による「非常戒厳」宣言を巡り、内乱罪で同氏を起訴した。史上初の現職大統領の逮捕・勾留、そして起訴へと至る過程は果たして公正に行われたのだろうか。否である。韓国はいま、法さえ機能しないカオスの中にある▼尹大統領の弁護団は起訴当日、「検察の歴史上、消すことのできない恥辱として記録される」と批判した。内乱罪に対して検察の捜査権はない。捜査を行った公捜庁も、公捜庁法に捜査対象の犯罪として内乱罪は明示されていないため、「違法捜査」を行ったこととなる▼検察は、既に起訴された金龍顕前国防相の捜査結果や、軍幹部らの証言などから、尹氏の内乱罪の立証が可能だとの立場だ。金氏の起訴状には、非常戒厳解除を求める決議を可決するため国会に集まる議員を「銃を撃ってでも引きずり出せ」と尹氏が指示したとの証言が盛り込まれている。だが、間接的な捜査に依拠した検察側の主張が受け入れられることは常識外のことだ▼法的根拠が希薄な起訴に対して、国民は検察、公捜処、そして野党「共に民主党」に背を向け始めた。尹大統領の支持率は急騰。ばらつきはあるが、中には50%を超える支持率を発表する調査会社もある▼昨年12月3日に尹大統領が戒厳令を発した時、尹氏は現職の大統領としてその決断を下していた。戒厳令宣布は憲法が定める大統領の固有権限であり、この点において、いま行われている広範な憲法論争が展開される余地は、そもそもなかったはずだ。 |