最近の各種世論調査で、与党「国民の力」と弾劾反対派の支持率が上昇していることが明らかになった。保守右派、特に新興保守右派の怒りが浮き彫りになっている。もちろん「共に民主党」の李在明代表に対する不信感が数字に反映されたという側面もある。一方で既存の大手政党よりも新興右派の発信力が上回っているという実態も随所で確認されている。
(ソウル=李民晧)
「どうせ李在明」に反感
今回の尹錫悦大統領弾劾事件で見られる世論の風向きは、朴槿惠弾劾時とは全く異なる様相を示している。右派が結束して支持を集め、既得権益を握る左派に対抗する姿を示しているからだ。
そうした風向きの変化は世論調査の数字にも表れている。週刊誌「時事ジャーナル」が行った世論調査(18~19日)の結果、回答者1006人のうち、保守右派志向が323人となり、進歩左派志向(196人)の1・6倍に達した。これは、今まで「回答回避率」が高かった右派が積極的に自らのスタンスを表明し始めた結果とも言える。言い換えれば、こうした現象は「右派の結集」と「左派の分裂」が起きているということに他ならない。左派界隈でも「李在明」ならぬ「オ・デミョン」(どうせ=オチャピ、大統領=デトンニョンは李在明)に反感を持つ人が続出している。李在明代表に対する好感度の低さが民主党支持の低下に繋がっていると言えるだろう。
進む右派の二分化
尹錫悦大統領弾劾事件に関連するもう一つの現象は、保守右派の二分化だ。国民の力を中心とした既存の大手政党や朝鮮日報などを中心とした右派と、これに反発し街中で人を集める新興右派集団に二分している。支持政党を問わず、一個人が既得権益に反対し、左派反対を訴えているのだ。
新興右派の声は、公務員試験における韓国史科目の人気講師、チョン・ハンギル氏の動画から垣間見ることができる。
チョン氏が「20~30代と国民への訴え文」というタイトルでYoutubeにアップした動画は、公開からわずか1日で再生回数330万回を突破した。こうした熱烈な反応に対し、「共に民主党」はYoutubeの運営会社「Google」にチョン氏を訴える一方、中央選挙管理委員会もチョン氏に会い説明を求めた。
一個人が「国民の力」に勝る
20~30代の若い右派の登場も目立つ。30歳の旅行系Youtuber「マド・クリティック」がアップロードしたJTBC記者とのインタビュー映像は、アップ初日に再生回数130万回を突破した。クリティック氏は、「左派政権が国民を分裂させるよう扇動しポピュリズム政策を行っている」と説明し、事例を挙げて詳しく説明した。
これは、一個人が韓国の与党・国民の力の発信力よりも強力な”大型スピーカー”になれることを示す好例だ。これに対し、政治評論家の沈揆珍スペインIE大学教授は「韓国のすべての領域で既得権と反既得権の対立が繰り広げられている。これは単なる左右の戦いではなく、既得権と反既得権の戦いだ。政治、メディア、法曹界でもこのルールが働いている」と主張した。
新興右派の声は、いつか「民意のビッグウェーブ」を起こすのだろうか。変化が著しい韓国社会の特性を考えると、既得権層を脅かす一つの政治勢力になる可能性も十分考えられるだろう。
 | | 尹錫悦大統領の弾劾関連集会(左が賛成、右が反対)
チョン・ハンギル氏のYoutube動画 |