続けて14番歌を紹介する。
高山 与耳 梨
山 与 相 之
時 立 見 尒 來之
伊 奈 美 國 波 良
新しい解読はこうだ。
高い山に大勢の群れが祈っている。
山に対して群れをなして互いに祈っているよ。
折を見て山に、良いことがあるよう祈りに来た。
あなたがどうしようと称える国だから。
今までの解釈と比べてみてほしい。
香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印南国原
(香具山と耳成山が闘ったとき、出雲から立って見に来た神がいて、ここが印南国原である)
高山 与耳 梨
高い山に大勢の群れが祈っている。
山 与 相 之
山に対して群れをなして互いに祈っているよ。
時 立 見 尒 來之
折を見て山を見ながら、良いことがあるようにと祈りに来た。
「時」は、折を見てという意味で使われている。中大兄皇子が忙しい中、折を見て祈りに来たということだ。
伊 奈 美 國 波 良
あなたがどうしようと称える国だから。
「伊」は山である。「美」は称えるという意味だ。
山を「どうしようと称える(奈美)」と言った。どんなことをしても称えると言った。
日本水軍を蝉の抜け殻の呪い通り水葬しても称えねばならないはずである。
中大兄皇子は飛鳥へ来て、母親の御陵の場所を決め、折を見てこの聖なる山を訪ねた。
皇子は百済への派兵が緊迫して進んでいたとき、勝利できるようにとひたすら祈った。そして鼓舞されて福岡の本陣へ戻った。
一方、彼が作った二つの歌(万葉集13、14番歌)もその呪いを実行する機会・時を伺っていた。万葉の神は、遠からず蝉の抜け殻の呪詛を実行に移した。残酷な運命が、韓半島の白村江沖で中大兄皇子と倭国軍を待っていた。倭国と韓半島の歴史が激しく揺れた。
中大兄皇子が勝利を祈った山はどこだったのか。それは三輪山だった。万葉集17番、18番歌を見ると中大兄皇子は、三輪山が自分の願いを叶えてくれず白村江で敗北させたとして、近江への遷都のとき、三輪山に火を放った。
13番歌の最初の句に注目してみよう。
「高山 波 雲 根 火」は、「高い山に雲のような煙を出して火を起こしている」とも解読されるが、「高い山が雲のような煙を吐きながら燃えるだろう」との解読も可能だ。確実だ。高山は三輪山だった。
以上が、白村江の敗戦を呼んだ蝉の抜け殻の呪い、万葉集13番、14番歌の話である。
蝉の抜け殻の呪い(万葉集13、14番歌) <了> |