今年6月7日に創業40周年を迎える百花亭は、西船橋の本店のほか千葉市内に店舗を構える。長年にわたり地域で営業努力を重ねてきた在日韓国人2世の金鐘保代表に話を聞いた。
――創業40周年おめでとうございます。長年にわたり和食・居酒屋〈百花亭〉を経営されてきた背景について、お聞かせ下さい。
金鐘保代表:ありがとうございます。百花亭を始める10年前から西船橋で別の店舗を構えていました。30歳から飲食の道に入りましたが、料理とお客様に接することが好きで、店で一緒に働く女房・料理人・従業員の皆に恵まれたというのがあると思っています。
――韓国料理などはほとんど扱かわれていませんが、和食に徹した理由などを教えて下さい。
金鐘保代表:私は在日韓国人2世ですが、差別・貧困などと闘ってきた親の苦労を見て育ちました。「日本社会に我々がどう貢献できるのか」という共生・「お互いが助け合う」共助を当初から課題としていました。在日として仕事を通じて日本の社会で生きることを考えたとき、日本の人々が最も喜んでくれる、魚を素材にした飲食店のスタイルに思い至りました。私が店で提供している料理ひとつにしても、和の文化と呼べると思っています。伝統文化をいかに大事にできるかは、重要なことだと思っています。
――伝統文化を守るために努めていることは何でしょうか。
金鐘保代表:長いこと店を切り盛りしていますので、1990年代以降の「失われた30年」と呼ばれる時代の損失が本当に分水嶺だったと思います。どの時代でも、職人と呼ばれる逸材・物事を極めようとする人材を育てたいのであれば、国が率先して若手人材を輩出する経済システムの構築が重要だと考えています。現在、日本の食料自給率は38%を切っていると聞きます。かつて、飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本人の誇るべき真面目さ・優秀さを、結果的には活かせない方向へと進めてしまった舵取りに問題があったと私は思っています。コロナ終息後、社会も変わったところがあるように最近は感じています。
――最後に、韓日国交正常化60周年を迎えるこれからの両国関係について、思うところをお聞かせ下さい。
金鐘保代表:最近の戒厳令などをみても、韓国には独自の強烈な民族主義・歴史意識があり、日本人に分からない感覚があるというのは間違いないです。そのような韓国の良くないところも、日本が韓国から悪く思われているところも、在日が仲介して互いの人間性や優しさにまず気づくようにしてあげることが、大事だと思っています。私がしている商売は、人の縁に助けられています。百花亭での40年の時間の中で、私が実践してきたことは、ただ「日本の風情を守る」ということでした。
金鐘保代表と妻の富子さん。〈百花亭〉のシンボルである風車が印象的だ |