ウクライナ戦争は西欧が諜ったのに、意図に反し西欧中心の国際秩序を崩す結果をもたらした。即終戦を公約し、NATOからの脱退まで言及するトランプ米大統領が20日就任する。だが、ゼレンスキーのキーウ側を代理軍とした西欧の主戦派は、自らの敗北を認めず局面転換や時間稼ぎを目論んでいる。西欧は、ロシアとの戦争で敗北を認めれば、これまでのように国際秩序を主導することができないからだ。米国を再建し中国を制圧するという戦略目標は、米国が同盟国を引き続き掌握・支配できるかどうかにかかっている。西欧主導の国際秩序打破を追求する中国とロシアは、トランプの就任前にロシア・メドヴェージェフ前大統領が北京を訪問(昨年12月10日)、両国の戦略的結束を再確認した。
ウクライナから中東へ
さらなる混沌と悲劇生む
いかなる堅固な城塞でも、それを支えている大地が揺れて割れれば崩れる。難攻不落に見えた西欧秩序と西欧文明が、文明史の軸を揺るがす混沌で崩れている。国際秩序を揺るがすこの混沌は西欧自身が生み出したものだ。
1カ月前にテュルキエの侵攻によるシリアのアサド政権の崩壊も、意図的に中東地域を混乱に陥れ、そこから利益をとってきた西欧が作った構造が崩れたものだ。NATO会員国としてソ連の南下を阻止したテュルキエが、オスマントルコ時代に第1次世界大戦の敗戦で失った領土の一部を取り戻すとの姿勢を示した。いずれにせよ、西欧はいったん、世界の視線をウクライナ戦争敗北から、中東の巨大な力の空白とこれから起こる混沌と葛藤の方へそらしている。
ウクライナ戦争、イスラエルと周辺諸国間の戦争、地球的エネルギー紛争、世界の景気低迷など、すべてはこれまで国際秩序を主導した西欧自身が招き、促進したものと言うしかない。
欧州諸国を政治・社会的不安定に追い込んでいる「難民問題」も、西欧が作ったものだ。東西冷戦で勝利したグローバルリベラル勢力は、自らの覇権を維持するため新たな戦争を企図したと言われている。事実、NATOは自分の能力以上の成果を求めてきた。NATOに抵抗するユーゴを破壊、領域外の世界に膨張していった。NATOが介入した地域には混乱と悲劇が残された。
ここ30年間、米国とNATOが企図、介入した戦争の背景にはイスラエルを保護するための「周辺国荒廃化政策(戦略)」があったと指摘される。イスラエル周辺の国々を破壊、国を「空洞化」し、数多くの難民を発生させた。そして西欧はこの難民たちを大挙受け入れた。
西欧は世界を自らの支配下に置こうとした。ロシアは西欧に憧れ接近したが、西欧はこれを拒否、逆にロシアを弱体化・征服するため、ウクライナ戦争を起こした。ロシアに対するアングロサクソンの偏見と憎悪は宗教的教義に似たレベルだ。米・英は中世の十字軍遠征のように、西欧全体をロシアとの戦争に動員した。しかし、彼らがロシアを過小評価したことに気づき、戦争能力が枯渇するや、韓国に軍事支援を求めた。トランプは、中米のパナマ運河の奪還にまで言及しはじめた。
NATOの拡張(侵略)路線に抵抗してきたロシアは、西欧との和合が不可能であることを悟り、視線を東へ向け「ユーラシア主義」を目指し始めた。ロシア征服に失敗した西欧は、いずれ分裂するしかない。
米欧の離反とG7の衰退
経済・軍事力で勝るロシア
米国はもはや欧州を守るため莫大な負担を引き受ける余裕などない。欧州よりアジア太平洋地域がもっと重要になったからだ。米国トランプ政権は、自国の利益の絶対化・最大化を推進する過程で、現実的に同盟国(西欧、韓・日など)を圧迫するしかない。
欧州戦争(ウクライナ戦争)の状況を整理すれば、強大な軍事力を持つロシアが平和を望んだのに、軍事力の貧弱な西側が戦争を好むと見ることができる。ロシアの核戦略と新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」などでの反撃、そしてプーチンの警告は、西欧を決定的に抑制する。振り返れば、プーチン大統領の警告は結局、すべてが行動に移された。西欧はロシアの最後通牒にどう対処するかを決定せねばならない。国土の5%程度しか防御できないNATOの防空システムは、すでにウクライナの戦場で消耗した。「オレシュニク」などを防ぐ方法はない。
経済的にもG7の時代は終わった。IMF(国際通貨基金)が発表した購買力基準のGDP順位(2024年)は、中、米、インド、ロシア、日、独、ブラジル、インドネシア、仏、英国、イタリア、テュルキエ、メキシコ、韓国、スペイン、カナダ、エジプト、サウジアラビア(以上1兆ドル以上)の順だ。世の中が変わったことが分かる。長年の制裁を受けたロシアが、EUの盟主だったドイツと日本を追い抜いた。
ロシアは、現戦線を凍結するというトランプなどの停戦案を受け入れられない。NATOとの戦争はすでに中途半端に妥協できる段階を超えた。ロシアはナチスドイツと戦った第2次大戦の際、8人中1人の国民が死亡した。米国の60倍以上、全世界の第2次世界大戦死亡者の半分がソ連(ロシア)国民だ。ロシアは文明史的に途方もない歴史を経験した。一世紀の間に封建社会から共産全体主義を経て資本主義に到達した。
半面、そのような凄まじい経験のないアングロサクソンなどは歴史を自らに有利に描いてきただけだ。ロシアのみならず世界は、「西欧」の偽善と詐欺を十分に経験した。特に西欧諸国が強要する、国家主権を無視する「規則基盤秩序」というグローバル全体主義独裁体制を嫌悪、警戒するようになった。
西欧の偽善と嘘が露呈
グローバルサウスの選択は
グローバルDSによる検閲や巨大メディアを動員した扇動と洗脳は、自由と自主を目指す勢力との対決へ進むしかない。グローバルDSが押さえているEUは、今のように「主権国家」を抑圧しながら存続できるか。フランスのマクロン政権とドイツのショルツ政権が窮地に追い込まれている。米国と欧州の葛藤も遠からず表面化するしかない。西欧と非西欧の対決は政治、軍事、経済・科学技術、情報戦で展開される。常識と約束と法を平然と無視、恥すら知らない者たちに統治権力を与え、そのような体制を先進文明と自慢することを容認するわけにはいかない。米・英の情報機関はグローバルDSの価値を守る前衛隊として世界支配を強固にしようとするが、LGBTのような破壊的価値や軍産複合体の利益を優先する体制に対抗する情報機関は、戦略的思考の深さと健全性で姿勢が違う。
ナチスのホロコーストに沈黙した西欧社会は、今はグローバルDSが幇助するガザ虐殺など、西欧諸国の人道犯罪に沈黙している。国際刑事裁判所がイスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防長官に対し逮捕状を申請(昨年11月)したら、米国のシオニストたちが猛反発した。
グローバルサウスでは、ロシアが世界を西欧から自由にするとの期待が高まっている。伝統的な友邦との関係は大事だが、激変する国際秩序の中で文明史の流れに賢明かつ機敏に対応する姿勢が何よりも重要だ。
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