民団中央本部人権擁護委員会は8日、「韓日基本条約締結60年」に関するシンポジウムを開催。今日の在日コリアンが置かれた法的地位について討論を行った。各界を代表する4人のシンポジストを中心に、課題と解決策を展望した。(大阪=韓登)
大阪200人参加し開催
来年、韓日基本条約締結60年を迎えるにあたり「今改めて、在日コリアンの法的地位を問う!」をテーマに8日、大阪市内のホテルで200人が参加しシンポジウムが開かれた。
各界を代表する4人のシンポジストが意見を述べた
主催は在日本大韓民国民団中央本部人権擁護委員会で、在外同胞庁、駐大阪大韓民国総領事館、日韓国際学術学会が後援した。
挨拶に立った金利中・民団中央本部団長は、「人権の問題は難しいが、日本の法律を遵守しつつ、我々の権利を主張していきたい。このシンポジウムの場でいろいろな意見が出ると思うが、それらの意見を課題解決の糸口とし、前に進む礎になることを期待する」と述べた。
続いて、趙龍済・人権擁護委員会委員長は、「1965年の韓日基本条約によって韓日間の国交は正常化されたが、日本政府の植民地政策の歴史により、日本に居住するに至った私たち在日コリアンの法的地位は、多くの課題を残した。今回のシンポジウムで、韓日基本条約の評価ならびに、現状の在日コリアンの法的地位とその課題、さらには問題解決に向けての有意義な意見交換がなされることを期待する」と述べた。
モデレーターを務めた朴一・大阪市立大学名誉教授と、シンポジストとして田中宏・一橋大学名誉教授、丹羽雅雄・弁護士、郭辰雄・コリアNGOセンター代表、金明弘・民団大阪本部団長の4人が登壇。朴一モデレーターから、(1)65年韓日条約の評価(2)在日コリアンが置かれた法定地位とその課題(3)課題克服にむけてなどのテーマが紹介された。学界から田中名誉教授、弁護士界から丹羽氏、活動団体から郭氏、民団を代表して金氏という形で討論が進んだ。
■田中宏 名誉教授
(1)について、記憶として東南アジアの留学生が「千円札の伊藤博文は、朝鮮民族の恨みを買ってハルビンで撃たれた人でしょ。このお札を使う『在日』に残酷なことをするんですね」と語ったのを覚えている。
(2)について、地方参政権問題などには泣き寝入りせずに、納得できないことには「異」を唱えることが肝要である。
(3)について、2025年は戦後80年、在日コリアンが「自己の意思表示」を届け出ることにより「日本国籍」取得を認めるのはどうだろう。
■丹羽雅雄 弁護士
(1)について、日本は「韓国併合条約」を合法とするが、韓国は無効であるとし、植民地支配の責任の履行を求めている。日本国政府は特別永住者に対して、日本国籍者と同等の権利を保障すべきであると考える。
(2)について、在日韓国人の法的地位に関する日韓の当初の交渉提案は、いずれも出入国在留管理法制度の枠内での交渉であった。
(3)について、解決すべき課題は、戦後補償、国籍選択権と永住権の保障、地方選挙権・被選挙権、住民投票権を含む社会参画、外国人学校や民族学校・民族学級を含む教育権の保障など。
■郭辰雄 代表
(1)について、日本政府は在日コリアンの歴史性に対する考慮もなく、韓国政府も積極的に解決を求めてこなかった歴史がある。あらためて、人権の視点に立った韓日条約の今日的課題を考える必要がある。
(2)について、在日コリアンの置かれた法的地位を考えるとき①旧植民地出身者とその子孫(特別永住者)で韓国国籍を有する者②特別永住者で朝鮮籍を有する者③新規渡日者④日本国籍取得者⑤海外国民として日本で生まれ、永住資格等を保持したまま韓国国内で居住する者の五つの観点が必要。
(3)について、在日コリアン社会は日本国籍取得者、あるいは祖父母や親世代がすでに日本国籍で出生時から日本国籍のコリアルーツの人たちに対し、どのようにコリアンとしての自己肯定感、アイデンティティーを持てるような環境を提供できるかを考えていくべき。
■金明弘 団長
(1)について、韓国側には経済をどうにかしたいという切羽詰まった事情があったが、日本側も自国の安全保障のために日韓は同盟国でなければならないという強い認識があった。この思いが交点を結んで日韓基本条約は成立した。
(2)について、特別永住者は、80年以上前から日本に暮らし、納税の義務を果たしながら、日本社会の発展にも貢献してきた。まずは特別永住者からでも、地方参政権が付与されるべきであると考える。
(3)について、日本に暮らす市民として日本人と変わらぬ生活ができる権利と環境が保障されることが大切。長年の日本の地域住民として地方参政権を求めるのは当然の権利だろう。
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