尹錫悦大統領が3日夜に「非常戒厳」を宣布し、6時間後の4日未明に解除した一連の韓国政界の混乱は、韓日両国の経済にも影響を与えている。尹大統領の就任以来、官民挙げた交流が盛んになるとともに、経済交流も活性化されたが、株安、ウォン安につながるなど、先行きに不安要素がみえてきた。
株・ウォンが急落
3日夜の非常戒厳令を機に、韓国国内の政局混乱を不安視したウォン売りが加速。一時、1ドル=1440ウォン台と約2年ぶりの安値水準を付けた。週明けの9日にもウォン売りが続き、1ドル=1430ウォン台と下落が進んでいる。
売られたウォンは、円が逃避先となった。米連邦準備制度理事会(FRB)が月内で利下げに踏み切るとの観測から、金利低下が見込まれるドルを売って円を買う動きが出ていたところに、ウォン急落のショックが重なった。円相場は3日深夜に一時、1ドル=148円台後半と約1カ月半ぶりの水準まで高騰した。週明けの9日は150円前後で推移し、落ち着きを取り戻している。
韓国株式市場の4日の総合株価指数(KOSPI)は、前日比49・34ポイント(1・97%)安の2450・76で寄り付き一時、2440台まで下がったが、前日比36・10ポイント(1・44%)安の2464・00で取引を終えた。5、6日もKOSPIは続落し、週明けの9日には2360・58で取引を終え、年初来安値での下落が続いている。
格付けに影響も
グローバル格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は報告書で、一連の非常戒厳令について、「信用格付けの高い国では予想できないことだ」としたが、同社関係者は「韓国の格付けに特別な影響はない」としている。一方で、世界3大格付け会社の一つであるムーディーズは「政治的対立が長期化すれば、韓国の格付けに否定的な影響を及ぼしかねない」と懸念している。
野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、尹大統領が失職し、来年前半にも大統領選挙が行われ、最大野党「共に民主党」の候補が当選した場合、「韓日関係が再び冷え込み、両国の経済関係にも悪影響をもたらす」と予測している。
一部で買いだめ
韓国の市民生活への影響も現れている。一時的に生活必需品を買いだめする現象が起こっていた。流通業界によると、4日の非常戒厳宣布直後から約1~2時間、コンビニエンスストアで即席ごはん、缶詰、ラーメン、ミネラルウォーターなどの売り上げが急増したという。流通業界では「主に非常戒厳を体験した50~60代で、不安心理が作用した」とみている。クーパンなどのeコマースでも、ミネラルウォーター、ラーメンのほか、コメ、おむつの需要が急増した。
観光にも悪影響
在日同胞学生の添乗員として、非常戒厳宣布時にソウルに滞在していた旅行代理業を営むMTプラネットの金順謙社長は「3日の日中は国会議事堂の見学などをしていたが、変わった様子はなかった。その日の夜に非常戒厳が発令されたが、ホテルに滞在していたのでとくに異変は感じなかった。翌日の未明にそのまま解除されたので、『本当にそんなことがあったのか』という感覚だった。翌日の街も普段通りだった」と話す。事業への影響については「顧客から韓国旅行に対する不安の声が聞かれたが、キャンセルは1件もない」としつつも、「早く政情が安定してほしい」と願っている。
一連の韓国政界の混乱は経済への影響も懸念されている。6日のハナ銀行本店の経済指標ボード |