韓国教育財団碧夆奨学生として、今年5月にイェール大学大学院国際・開発経済学修士を取得。日本への一時帰国を経て7月に再び渡米し、イェール大学大学院で環境経済学の研究助手として、社会人の第一歩を踏み出した。
東京の女子学院高校に1年通ったのち、オランダのインターナショナルスクールに留学し卒業。その後、渡米しウェズリアン大学で経済学と数学を二重専攻した。
卒業後、大学院で学ぶことにしたが円安が進んだことで、学費と生活費の工面に悩む。奨学金について調べ、韓国教育財団の碧夆奨学基金のことを知り応募し、採用された。
そのときの気持ちを「これで金銭面のことを気にせず勉強できるとほっとした。両親とともに教育財団に深く感謝している」と語る。
大学院では主にベトナムの人口調査データを基に、海外直接投資による生活水準向上の実態を研究した。
ベトナムに関心を持ったのは日本で高校生だったころ、通っていたカトリック教会でのベトナム少数民族支援活動がきっかけだった。
その後、留学したオランダのインターナショナルスクールで、日本・韓国以外のアジア、欧米、アフリカなどの多様な国の生徒との交流で、さらに大きく世界に視野を広げる。
大学院では経済理論を学んだが、より意義深かったのは、さまざまな出自を持つ多くの学生と交流を深めたことだった。
「各国の経済状況について、報道では分からない現実を知ることができた」という。
友人の一人はアフリカ屈指の経済力の国出身だが、一部に富が偏り、大多数の国民が貧困に苦しんでいるという事実を教えてくれた。
インド出身の学生が中心になって開催されたヒンドゥー教の光の祭典といわれる「ディワリ」の実体験は「感動的な思い出」と語る。
「将来、祖国に帰って国の発展に貢献するさまざまな出自の学生と仲良くなれたことは大きな収穫」と振り返る。
韓国教育財団に対しては、「未来ある若い留学生を多数支援している財団のおかげで資金の心配をすることなく、勉学に励むことができた」と心から感謝している。
碧夆奨学基金については「在日韓国人対象の奨学基金は極めて少なく、同胞は資金的な問題から留学をためらうことがある。しかし同基金によって資金の心配をすることなく勉学に集中できるので、留学実現のきっかけとして大きな意義がある」と評価している。
奨学生として学んだ在日同胞を「卒業後に活躍することで、韓国と日本双方の発展に寄与し、友好親善に大きく貢献している」と功績をたたえる。
現在学んでいる碧夆奨学生には「専門分野の研究を極めて、奨学生同士の繋がりを深めてもらいたい」と望んでいる。
今月からイェール大学大学院で環境経済学研究助手として2年間勤務する。電気自動車や環境経済学などについての調査を行う。
その後は博士課程に進み、博士号取得後は経済学の専門知識を生かせる仕事に従事したいと考えている。
韓国と日本は少子高齢化、エネルギー安全保障など共通の課題が多い一方で、高度な製造業基盤を有している強みも持っている。気候風土などの環境も類似点が多い。
「気候変動にどう対処すればいいのか、環境による人への影響に関心が高い。米国でキャリアを築くとともに、韓半島にルーツを持ち日本で育った経験を、両国発展に資するよう生かし貢献したい」と夢が広がる。
| | 李智瑛(イ・ジヨン) 1999年生まれ。東京都出身。在日韓国人3世。米ウェズリアン大学卒。韓国教育財団碧夆奨学生としてイェール大学大学院国際・開発経済学修士取得。大学院では経済理論を学ぶ。2024年7月からイェール大学大学院環境経済学研究助手。
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