ロシアのプーチン大統領が19日から20日にかけて北韓を訪問した。プーチン氏は訪朝当日に、北韓の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」に寄稿文を寄せ、1面に掲載された。
訪朝を記念したとはいえ外国元首の寄稿文が同紙の1面を飾るのは極めて異例だ。プーチン氏の訪朝にかける意気込みと、北韓側のプーチン氏に対する期待感が込められている。
プーチン氏は寄稿文で「朝鮮戦争の厳しい時期も、ソ連は朝鮮民主主義人民共和国の人民に支援の手を差し出し、自主を目指す朝鮮人民の闘いを支持した」と過去の同盟関係を評価しつつ、「われわれは朝鮮民主主義人民共和国がウクライナで行われているロシアの特殊軍事作戦を揺るぎなく支持し、主要国際問題においてわれわれと連帯を表し、国連舞台で共同路線と立場を守っていることについて高く評価する」と、ウクライナ情勢に関する金正恩氏の立場を激賞。
「平壌は昨日も今日もわれわれの頼もしい同志、支持者として正義と自主権に対する相互尊重、互いの利益に対する考慮に基づく多極化の世界秩序の樹立を阻害しようとする『西側集団』の欲求を断固として反対する用意がある」などと、ロシア・北韓の連帯で西側社会と相対する姿勢を強調した。
プーチン氏と金正恩氏は19日午前、首脳会談を行い、「朝ロ間の包括的な戦略的パートナーシップ関係に関する条約」を締結。条約では「一方が個別的な国家、または複数の国家から武力侵攻を受けて戦争状態に瀕する場合、他方は国連憲章第51条と朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦の法に準じて遅滞なく自国が保有している全ての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と記されている。
1961年にソ朝間で結ばれた条約(96年に破棄)でも、「戦争状態に入ったときは、他方の締約国は、直ちにその有するすべての手段をもって軍事的及び他の援助を供与する」としていることから、軍事条約の復活である。今回の条約では国連とロシア・北韓双方の国内法の調整を前提としているものの、ロシアと北韓は軍事同盟国家となったわけである。
軍事面ばかりが強調されるが、条約の内容は経済、文化、教育、そしてIT関係や、国際犯罪など多岐にわたっており、21世紀の国際関係の趨勢に合わせているようだ。また「相互」「平等」というキーワードを使用しながら、「パートナーシップ関係」という言葉で、お互いの利益を追求するウィンウィン関係を強調している。
20世紀の冷戦構造におけるソ連を頂点としたヒエラルキーとの差別化を図りたいのだろう。よほどの不測の事態が起きない限り、プーチン・金正恩の蜜月関係は当分続き、新冷戦構造は固まっていくだろう。大韓民国が新冷戦構造の泥沼戦に巻き込まれようとしている現況に、どれほどの人々が危機感をもっているのだろうか。 |