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2022年07月05日 12:51
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デイリーNK・高英起の 髙談闊歩―第23回― 韓半島と日本の未来図を見せてくれた10番 

  ラグビー日本代表が2日、フランス代表と対戦した。筆者は40年以上、国内外のラグビー観戦を趣味としているが、それが高じて取材活動もしている。今回、ラグビーについて書いてみようと思ったのは、李承信選手が代表のスタンドオフとして先発したからだ。李選手は大阪朝鮮高級学校(以下、大阪朝高)OB、すなわち筆者の後輩にあたる。
李選手は大阪朝高時代に花園で行われる全国大会に出場し、高校日本代表にも選ばれキャプテンを任されるなど、早くから将来を嘱望される選手だった。帝京大学に進学するが事情があって中退し、一時期はラグビーができなくなる境遇に陥るも、名門の神戸製鋼コベルコスティーラーズに入団。二年目からは副キャプテンを任され、既に強豪チームの中核選手となりつつある。多くのラグビー選手が、大学卒業後にラグビーチームに入団することから考えると、異色の経歴を持つ21歳だ。
紆余曲折を経たうえでの代表入りということもあり、関係者や古くから応援していたファンからも歓迎の声があがっている。なによりも大阪朝高OBとしては、史上初の15人制フル代表という快挙だ。大阪朝高は花園常連の強豪校であり、数多くの実力のあるプレーヤーを輩出しているが、フル代表に選ばれるには今一歩及ばなかった。李選手がその壁を破った形だ。
ラグビーはサッカーや五輪などのスポーツと違って、当該国籍を保有していなくても、一定条件を満たせば国家代表になれる。世界最強のニュージーランド代表チームであるオールブラックスにも、周辺国であるトンガ、フィジー、サモアに出自を持つプレーヤーが多い。実力さえあれば、国籍に関係なく代表に選ばれるのがラグビーというスポーツである。日本のラグビー界でも、古くから在日コリアンのプレーヤーが活躍してきた。日本名の韓国籍プレーヤーや、韓国からの留学生として来日して代表に選ばれた金喆元選手、東京ベイ浦安の金正奎選手(実家は有名な焼き肉屋で美味しい)なども、ラグビーファンにとってはお馴染みのプレーヤーだ。韓国でラグビーは盛んではないため、代表のレベルもそれほど高くない。実力のある選手が可能性を求めて、世界強豪国の仲間入りをしようとしている日本代表を目指すのはプレーヤーとしては至極当然の選択だ。
一方、大阪朝高OBで韓国代表を選んだ選手もいる。NTTドコモレッドハリケーンズに所属する金勇輝選手だ。また、韓国代表のコーチは大阪朝高を全国的な強豪校に育て上げた呉英吉氏が務めている。強豪チームであるクボタスピアーズには、朝鮮大学校出身の金秀隆選手が所属する。
南北韓半島にルーツをもつプレーヤーが日本を舞台にして、時には味方、時には敵方として、体を張り実力を競い合う。ファンたちも、わだかまりなく彼らを応援し、拍手を送る。李選手の活躍ぶりに日韓朝の目指すべき未来を見た気がした。

高英起(コ・ヨンギ)
在日2世で、北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。著書に『北朝鮮ポップスの世界』『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』など。YouTube高英起チャンネルでも情報発信中!

2022-07-06 4面
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