過去数十年間にわたり本人の意に関係なく外国に送ったまま放置してきた数十万の我が国民に対し、政府はどのように対応すべきだろうか。海外に養子として送られた子どもとその2世・3世、つまり海外養子同胞に関する件だ。
1958~2018年の統計によると、1世代の海外養子児童は約17万人で、近年でも毎年約400人が海外に送られている。統計データのない1945年から57年の期間には3年以上続いた韓国戦争も含まれているため、海外養子児童の数は明らかにこの数字よりも多い。専門家によると、解放後から現在までに海外に送られた韓国の子どもたちは20万人にのぼるという。2世・3世まで含めると、海外養子同胞は50万人以上になるはずだ。
過去70年間にわたって続いてきた海外養子縁組は、その全てを個人的責任に帰結できる問題ではない。韓国戦争、国家的貧困…こうした複数の要因なくしては韓国の大規模な海外養子縁組を説明することはできない。そのため、自己責任だけではないという側面からも、この問題は国家が責任を負うべきだ。
もちろん、政府の海外養子関連政策が全くないわけではない。関連ニュースも次々と出てくる。しかし、国家レベルで海外養子同胞を見て見ぬふりをすることが妥当と言えるだろうか。
現在の法と制度、予算を鑑みた場合、論争の余地はない。
まずは予算から見てみよう。韓国では、新生児が生まれて韓国で暮らす場合、出生後約7年間にわたって養育費が支援されるが、この予算だけでも年平均で1兆ウォンだ。国内外の人道的支援を行う大韓赤十字社の予算が年間9000億ウォンを超え、我々より貧しい国を支援する韓国国際協力団の予算も年間8600億ウォンだ。しかし、韓国が海外養子同胞のために使う予算は年間10億ウォンに過ぎない。予算の観点で見ると、海外養子同胞に対して韓国はこれまで国家レベルで何らの意思を示してこなかったし、それは現在も同様だ。
親族を探す制度も改善の余地が多い。養子者にとって最も高い関心事は、実父母と兄弟に会うことだ。しかし、養子者は書類自体に不備がある場合が多く、これまでも書類上での親族探しは困難だった。また、個人情報保護法が厳格化されたことにより、書類が正確であっても親族が引っ越し等で所在不明になった場合は警察ですら勝手に介入することはできない。
そのため、親族探しは事実上、偶然の出会いに期待するしかない状況だ。現実的な代案としては、関係法の見直しや新たな法の制定が挙げられる。それに伴い、希望する養子者と親戚に限り「DNAバンク(遺伝子情報データベース)」を利用できるようにする。
現在、国家が運営するDNAバンクを活用できるのは失踪者などの犯罪犠牲者、認知症患者、戦死者の親族らを探す場合に限られている。子どもを自発的に養子として送った姻戚者や養子の当事者が利用することはできない。
警察庁によると、韓国は現在保有している技術・装備・人材により全ての養子者と親族のDNAを検査・保存することが可能だ。しかし、養子者や親族にとっては無用の長物だ。現行法がその限界を抱えているからだ。1人あたり5万ウォンを若干上回るDNAバンクの利用料を養子者や親族が負担すれば、政府の予算負担もなく、新たな制度で不利益を被る国民もいない。人権侵害の懸念については、制度を整えれば十分に対応することができる。
海外養子同胞に関する国籍法も改善の必要がある。海外養子者自身の意思にかかわらず、養子は養父母の国籍を取得すると同時に韓国国籍を失う。国民の基本的権利を無視した国家による強制追放であり、国籍はく奪だとの指摘を否定できない理由だ。
現行法上、海外養子1世が韓国国籍を望む場合は複数国籍を所持できるが、2世・3世の複数国籍は認められていない。外国人のように、帰化による韓国国籍の取得だけが認められている。
統計庁によると、韓国は今年から、死亡者が新生児を上回る「人口自然減少時代」に突入する。我々と血縁関係のない外国人の韓国国籍取得をより容易にする政策まで検討されている状況だ。むしろ海外養子者2世・3世に国籍取得の機会を与える方案を検討すべきではないだろうか。
*法務部は近日中に海外養子者に対する複数国籍許容問題に対する実務者会議を開催する方針。 |
- 2019-07-24 3面
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