18日にソウルの国立顕忠院で行われた金大中元大統領の5周忌追悼式で、主催者側が金正恩の弔花を最高位に配置した。主催者は金大中平和センターと遺族などだ。
追悼式場の入り口に向かって左手に朴槿惠大統領の弔花が、右手に金正恩の弔花が置かれた。唯一金正恩の弔花の下にだけレッドカーペットが敷かれた。わざわざ追悼式前日に新政治民主連合の朴智元議員や林東源・元国家情報院長らが開城工業団地まで取りに行き、2時間に一度は水をやっていたという。ちなみに全斗煥元大統領の弔花は金正恩の横に、盧泰愚元大統領の弔花も入り口から離れた場所に配置された。
憲法が定める反国家団体の首領の弔花を、よりによって大統領経験者の追悼式典で最も手厚く扱うというのは常軌を逸している。主催者側は「南北関係の特殊性を考慮して、現職の国家元首待遇をするのが正しいと判断した」と説明したが、そうだとしたらその「特殊性」を正さなければならない。
おりしも朴大統領は8月15日、「非正常の正常化」を訴えた。セウォル号沈没事故に象徴される安全管理の不備や、その事故をめぐって遺族らが異例の起訴権要求まで行っていること、野党政治家がそれに便乗して政権批判を行っていることなどが念頭にあったのかもしれない。何よりも分断国家として69年の歳月が流れ、それが「普通」になってしまった韓国の現状が非正常だということだろう。
しかしこの「金正恩弔花事件」こそ非正常中の非正常だ。わざわざ北韓に行ってまで弔花を受け取ってきた議員ら、それを許可した当局の認識も正さなければならない。
韓国は今、世界で唯一の分断国家になっている。これ自体が恥ずべき非正常かつ特殊な状態であるにもかかわらず、これを正すどころか、当然のことと受け入れている国民は少なくない。韓国は韓半島の一部、国土の北半分を不法に占拠されている状況であり、北の不法な政権とは休戦状態であるだけで戦争は終わっていない。戦争を再開せよという主張は乱暴すぎるが、北韓を解放し、一日も早く暴政の下で虐げられている同族を救い出す努力は欠かせない。
朝鮮日報元主筆の金大中氏は8月26日付の同紙コラムで、韓国内における非正常なできごとを取り上げ、「今この地は、重病を患って集中治療状態だ」と指摘している。
「韓国社会は病んでいる」との指摘は、金氏だけのものではない。朴大統領は15日の演説で「社会の積弊」という言葉を用いた。韓国社会のそこかしこにはびこる不正・腐敗などをえぐりださないかぎり、韓国社会の発展もないだろう。
金氏はさらに、諸問題の解決方法が間違っている点も指摘した。韓国では大きな社会問題が浮上するたび、ある者は集団で道路に寝転び、群衆となり、絶食や剃髪、最終的には個人的な歴史を持ち出して脅迫することが日常化していると嘆いている。これは特に近年において激化している。
例えば韓国の最大野党・新政治連合の議員らだ。約80人の議員らは8月26日、国会でセウォル号特別法制定要求のための闘争決議大会を開いた後、青瓦台(大統領府)と光化門で「場外闘争」を始めた。一部の議員は断食闘争まで行っている。
正常な政党ならば、論戦で主張をぶつけ合うべきであり、与党に対しても建設的な意見を唱えなければならない。闇雲に大統領を批判し、与党の足を引っ張るだけでは、野党としての正しい役割も果たせまい。
金氏はこのすべての責任を、反対勢力に負わせようとはしていない。反対勢力の攻勢を受け、大統領が強力なリーダーシップと勇気と意志と実行力を示せずにいるという。朴大統領の顔色をうかがう閣僚も、政権の一端を担う資質があるのか疑問だ。
国民が今一度、大韓民国のアイデンティティーを見直し、姿勢を正していかなければならない。在外国民を含めた全国民の力を集め、声を上げて行動を起こし、韓国を正常な方向に向けさせなければならない。国民が果たすべき役割は大きい。 |