安倍内閣の3閣僚が4月20日と21日、靖国神社に参拝した。それに続く形で「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」に所属する与野党の国会議員168人が23日、靖国神社を参拝した。
「なぜこの大事な時期に」という思いを抱かずにはいられない。おりしも北韓情勢をめぐって、米国のケリー米国務長官が韓国、中国、日本の3カ国を巡って対北戦略について話し合ったばかりのタイミングだ。東北アジアの安全に最大の脅威となっている北の暴走を止めるため、韓日中が連携しなければならない時期ではないか。
靖国神社を参拝すれば、外交問題に発展することは分かっていたはずだ。閣僚や国会議員であればそのくらいことは読み取れたはずだ。敢えて参拝したのかと疑いたくなる。
3閣僚の参拝があった時点で、日本の国内外から参拝を批判する声が相次いだ。
国内では野党民主党と共産党が会見を開いて批判。自民党と連立を組む公明党幹部ですら「最悪のタイミング」と、5月上旬に予定されていた日中友好議員連盟の訪中が中止になったことへの恨み節が聞かれたという。
4月22日の時点で韓国外交部は、「正しい歴史認識を基に責任ある行動を取るよう強く求める」と述べ、同月中に予定していた尹炳世長官の訪日を見送った。朴槿惠大統領は24日、日本とは協力関係に向かうことを基本としつつ、「歴史認識が正しく確立されることが前提だ」と強調した。中国外務省も「マイナスの振る舞い」と閣僚の参拝を非難。今月末に開催される予定だった韓日中首脳会談も延期が濃厚となっている。
国際秩序への挑戦
安倍晋三首相は4月23日、「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係において、どちらから見るかにおいて違う」と述べた。これはポツダム宣言から東京裁判を経て今日までつながる戦後の国際秩序に対する挑戦といっていい。
米紙ニューヨーク・タイムズは24日(現地時間)「日本の不必要な軍国主義」と題する社説で「安倍晋三首相と自民党は、逆効果を招く不必要な論争を巻き起こしている」と指摘。また安倍首相は隣国との摩擦よりも経済復興に注力すべきだとも指摘している。
ウォール・ストリート・ジャーナルも27日付の社説で、23日の安倍首相の発言を、「恥ずべき」と表現。「真珠湾、バターン死の行進、南京大虐殺の生存者にとってびっくりするようなニュースだろう」と指摘している。また韓国や中国の反応にも触れ、東アジア地域での孤立を憂慮した。
国際社会や人類社会発展の未来を左右する国家として、日本には多くの役割が望まれている。そのためにも勇気ある歴史総括が必要だ。安倍首相の一連の発言は、今や周辺国だけでなく米国という同盟国ですら懸念するものになっている。日本に住み、韓国と日本の友好を願う在日韓国人にとっても看過できない事態だ。
韓国も自制を
第2次世界大戦後に確立された世界秩序は、自由民主主義と市場経済国家間の紐帯を強固にした。韓日も米国との同盟関係を軸に、国交正常化以来大きな成果を残してきたことを自負すべきだ。
韓国は冷静に大国としての対応をすべきであろう。マスコミも対日感情を煽るような主張など報道姿勢に慎重を期すべきで、日本との関係をより成熟したものに発展させるべきだ。韓日米の関係は実質的な相互依存関係にあり、その基盤は固い。政治家の言動によって、今まで築いてきた実績や成果を無駄にしてはいけない。
韓国外相の訪日中止や4月29日に韓国国会で採択された対日非難決議も重要だが、韓米安保強化と対北政策の協議や円安・ウォン高の実体経済低迷に備える金融・経済対策に集中すべきだろう。まずは7日に行われる韓米首脳会談で問題解決のきっかけ見出してもらいたい。 |