韓国・ソウルにある39階建ての高層ビルで今月5日、原因不明の揺れが起きた。95年、ずさんな設計・管理によって500人以上の死者を出した三豊デパート崩壊事故の記憶が蘇った人は少なくあるまい。ところがこのほど、揺れの原因がフィットネスクラブの体操にあったという、なんとも拍子抜けするような結果が出た▼安全診断の総責任者である檀国大学の教授が「今回の揺れは、建物固有の垂直方向の振動数と、12階のフィットネスセンターでのテボ(テコンドーやボクシング、エアロビクスを融合させた運動)の垂直方向の振動数とが一致し、共振現象が起きて生じた」と結論づけた。オフィスビルは通常、コンサートホールなどとは異なり垂直方向で跳躍することが少ないと見て、水平方向の振動数のみを考慮して設計されているとのことだ▼本当にそうなのだろうか。いくら専門家がそれらしく説明してもまるで福島第1原発の事故説明を聞いているようだ。肩書きのある偉いセンセイがいくら安全だと言っても、三豊デパート崩壊事故も知っている身とすれば、為政者や権威者がいくら安全だといっても安心できない時代になったのだ▼そういう時代だからこそ見習いたいのが、韓国人のしたたかさと前向き(?)な姿勢だ。ビルの安全検査結果の発表後、振動の原因とされたテボへの関心が高まっている。ビルを揺るがすほどの激しい運動なのだから、ダイエット効果もあるだろうという発想らしい。各地のフィットネスクラブには「テボをやっているか」という問い合わせが殺到しているそうだ。 |