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危惧していたことが、とうとう起きてしまった。福島原発の事故だ。東電は「1000年に一度」、「想定外」と言い訳しているが、危険性はすでに警告されていた。
津波による被害については、08年の「石巻・仙台平野における869年貞観津波のシミュレーション」(活断層・古地震研究報告 No.8 p71―89)に書いてある。同報告は貞観津波のシミュレーションを行い、一例として、8メートルの津波によって今回の浸漬地域を予測している。07年の柏崎刈羽原発の事故時には、大前研一氏が独立した発電装置の設置を提案していた(『週刊ポスト』4月8日号p49)。これらを知らなかったとは言わせない。想定外ではなかったのだ。
福島原発の放射能漏れ対策は、これまで冷却水系統の復活に注力してきたが、設備内に放射能汚染水が貯まり、この回収に向けた作業が難航している。癒着・利権にまみれた東電と政・官・財(前掲『週刊ポスト』p137~、および『週刊文春』4月7日号)のツケはあまりにも大きく悲惨だ。
東京電力の勝俣恒久会長は、3月30日の会見で、ようやく廃炉に言及した。しかし、これまで進めてきた原発推進政策を根本から見直す姿勢は見せなかった。
過去の日本における電力消費量と発電能力との関係を図に示した(『週刊金曜日』3月25日号p12)。図のように、過去、最大電力消費は、火力発電容量とほぼ同じで、水力を足せば充足している。実際に東京電力は03年4月15日、福島と柏崎刈羽の原子炉17基をすべて止めたが、停電は起きなかった。
日本の電力は、30%原発に依存しているといわれている。実態は、原発を精一杯稼動させ、火力や水力発電を休止しているのではないか。
量的には少ないが、今では地熱発電所や風力発電所も稼動している。太陽光発電システムを設置した家屋も増えている。リチウム電池で自動車を動かすことも可能になった。自然エネルギーの活用は着実に展開されている。
風力発電では、海上発電の促進が期待されている。東電の海岸エリアでの海上風力発電のエネルギー賦存量(理論上の最大値)の評価を試算した結果が、「メンソスケールモデルと地理情報システムを利用した関東地方沿岸域における洋上風力エネルギー賦存量の評価」(日本風工学会論文集 第32巻第2号 平成19年4月)に発表された。それによると、東電の電力販売量の14%の賦存量を得たのだ。さらにマグネシウムを燃料とした発電システムも提案されている(「マグネシウム文明論」PHP新書 矢部隆、山路達也著)。
「脱原発」は可能である。「安全かつクリーン」な代替エネルギーの利用が実現できることは、数々の試算や過去の例が物語っている。 |