北アフリカと中東でのデモの波が、北韓に波及するかが注目されている。北韓と深い関係を保ってきたエジプトでムバラク政権が倒され、北韓が盟友関係を結んできたリビアでは独裁打倒への戦いが本格化しようとしている。
北韓はリビアやイランなど、中東諸国との武器取引によって年間数十億ドルの外貨を稼ぎ、それを元手にシンガポール経由などで石油を輸入している。
北韓は連日、官営メディアで社会主義の優位を強調しはじめた。中国との国境地域では外部情報の伝達手段である携帯電話が通じにくくなり、USBメモリやDVDの流入・流出を取り締まる身体検査も行われているという。アフリカ諸国でも携帯電話の普及率が60~70%と言われるなか、時代錯誤の情報統制の強化が外部に知られるまでになった。
中東の動きは、長期独裁政権は崩壊を免れないことを如実に示している。体制は人民の意思の上にしか最終的には立てられないということだ。外部支援と権力独占と粛清のうえに2代60年を超す長期世襲独裁を保ってきた北韓の金一族政権も、岐路に立たされている。
リビア首都情勢と傭兵情報
リビア情勢は、反政府勢力が首都トリポリに迫ったことで一層緊迫している。カダフィ政権の鎮圧による死者は2000人を超えるという。
反政府勢力は全国規模の評議会を設置する方針を明らかにしたことが伝わっている。カダフィ後を見据えてリビアは動き始めている。
そのなかから、カダフィ体制を支える治安部隊に北韓の傭兵がいるという情報が流れている。韓国の外交関係者は「北韓軍がリビアに派遣された前歴があり、そういう噂が広まったようだ。しかしその可能性は非常に少ない」としたが、リビアには韓国企業が多く進出しているほか、北韓からも数千人の技術者、労働者が派遣されているという。
首都トリポリを固めて反体制派と抗戦するカダフィ政権の姿は、全国に政治犯収容所を構築し、連座制によって人民の声を抑圧する金正日政権が、平壌を固めて独裁体制の根拠地としているのと共通している。北韓が傭兵を派遣していることが事実なら、北韓が長期独裁に反対するリビア民衆と敵対していることがあからさまとなる。
北人民に真実の情報を伝える活動を行っている韓国の国民行動本部は2月14日、中東の民主化を支持する声明を発し、「北韓で何かあれば民衆を支援する」と明らかにした。われわれも中東民主化を支持する。そして北韓でたゆみなく続いている反独裁民主化要求の声なき声を支援する。
そんなさなかの2月18日、比較的国際情勢が伝わりやすいといわれる中朝国境の新義州で、市場を取り締まっていた保安員の暴行に怒った商人ら数百人のデモ隊を国家安全保衛部と軍部隊が鎮圧し、数人の死者が発生したと伝わってきた。北当局は各地域の人民保安局ごとに100人規模の「暴動鎮圧特殊機動隊」まで組織し、暴動の可能性を探索しているという。
食料品価格の高騰
チュニジアに端を発した一連のデモの背景には、食料品価格の高騰がある。「世界的な食料品価格高騰が危険な水準に達し、貧困層に苦しみを与えている」とはゼーリック世銀総裁の言葉だ。
一昨年末の貨幣強制交換の失敗で、北韓でも食糧価格の暴騰が起きている。平安北道では2月中旬、「コメよこせ、明かりをよこせ」と叫ぶ声が上がったという。平壌市の行政区画が変更になり、面積が約半分に縮小されたことも伝わっている。
平壌を除いて廃止された配給制に替えて人民が取れる自衛手段は原始的な市場しかない。金正日政権が食糧支援や経済支援を請うている諸国は、北当局が敵視する市場システムによって経済活力を得ている。人口の8割が市場に依拠する北韓で、市場弾圧は自国の民衆の生存手段を奪うに等しいことは金正日政権も承知のはずだ。世界の情勢の真実を知らせることを恐れる統治者は去るしかないだろう。 |