朴・ジョンス(愛国団体総協議会執行委員長、予備役准将)
李明博大統領は、9月21日、ニューヨークでの演説を通じ、北韓の核武器廃棄と安全保障や国際的支援を一括妥結するグランド・バーゲンを提案した。一部のメディアは、この提案に対する米国の微温的な反応から、韓・米間に北韓の核武器解決のための各論において意見の差があるのではないかで憂慮した。金正日体制の安全を第三国が保障できるのか、その体制維持を保障することが果たして正しいことなのかの問題はさて置き、北韓の実質的な核武器廃棄なしに、段階別の手続きや支援を論じるのは、過去の経験から無意味という李大統領の指摘は妥当だ。
北側は、去る15年間、協商を利用して時間を稼いで2回の核実験まで実行した状態だ。過去の崖っぷち協商術に騙された試行錯誤を繰り返すわけにはいかない。だが、北側は「先核武器廃棄、後支援」の案に応じないはずだから、協商方法としての現実性がないという専門家たちの指摘にも一理がある。
北の核武器は韓国への直接的な脅威
北韓の「核問題」の解決において、韓米間には原爆の廃棄という大きな方向では同じだが、解決法や接近方法では違いがあり得る。韓米間の国益が違うためだ。北韓の核武器能力が現水準で凍結され拡散されないという保障さえあれば、北の原爆はアメリカの安保に致命的な脅威にはなれない。ただ、NPT体制の維持をはじめアメリカの世界戦略に問題になるのだ。
だが、韓国にはただ一発の核弾頭も安保には致命的な脅威なのだ。問題は、韓国が協商を主導できる力、すなわちハードパワーがないまま、同盟国のアメリカに全的に依存していることだ。もちろん、韓国は経済支援というソフトパワーを持っている。しかし、これはハードパワーを基盤とする時のみ、その力が発揮できるものだ。
韓国が北韓と核問題を協商できるハードパワーを持つためには韓国も核武器を保有し抑止力を持たねばならない。核武器はその破壊力が凄まじいため核武器をもってだけ抑止が可能だからだ。潜在的敵国や競争国が核を開発すると、国家が取れる戦略的選択は二つのみだ。武器化して実戦配置の前に除去するか、対応核武器を保有して抑止力を持つことだ。2次大戦後、旧ソ連がアメリカに対し、近くはパキスタンがインドに対抗するため核武器を開発したように、いわゆる「核クラブ」の国々は、抑止力の保有か、または不可抗力的な戦略的優位を確保するため核武器を開発したのだ。
韓国は、左派政権の下で「北の核武器不容認」という目標を立てた。しかし、実際の政策は、「核武器を開発している北韓」と、その次には「核武器を保有した北韓」と衝突さえ避ければ良いという「仮面の平和政策」だった。国家安保に致命的な威嚇を除去するため、より小さな危険を甘受する覚悟と勇気が無かったのだ。もう残された選択は、韓国も対応の核抑止力を保有する道だけだ。
韓国が核開発を闡明し、開発に着手すれば、日本も核保有の動きが始まるはずで(台湾も核武器開発の再開への動きがあり得るし)、東北アジアは核競争状況へと進む可能性が高い。これは、イランをはじめ中東の国々にまで核開発を触発させるだろう。アメリカは、NPT体制が崩れるこういう核拡散状況を到底受容れられないはずだから、積極的に反対するだろう。韓・米相互防衛条約の廃棄まで持ち出す可能性がある。世界すべての国が反対し、特に核クラブの国々が積極的に反対するはずだ。
中国は、韓国の核武装も問題だが、日本が核武装まで行く状況を我慢できないはずだ。万一、日本が核武装をすれば、日本との核競争をやらねばならないからだ(さらに台湾まで核競争に飛び込むのは許せないはずだ)。このような状況は中国安保において北韓との関係維持よりはるかに重要なことであるため、韓国が外交力を上手く発揮すれば、中国は進んで北韓の核武器廃棄に決定的役割をなし、東北アジアの核競争状況への発展を阻止するだろう。
アメリカの反対は、韓国の目標が核武装でなく韓半島の非核化であり、北の原爆が除去される場合、核武装を中断するということを認識させれば、「好意的な反対」へ誘導できるだろう。
韓国の目標は「非核化」であるとアメリカを理解させねば
現在、韓国に提供される「核の傘」は、韓米相互防衛条約に基づくもので、アメリカの憲法手順を踏まねばならないため、米国民(議会)の同意を得なければならず、万一、北韓が現在開発中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)で対米抑止力を持つようになれば、留保され得る「不完全な核の傘」だ。抑止力とは、つまり報復能力をいう。北韓がこういう核の傘を実質的な膺懲・報復能力として認めなければ、核の傘は抑止力として無意味だ。したがって、韓国が核武装を放棄する代わりに、韓国にアメリカの戦術核を再配置し、共同運用する完ぺきな核の傘協商も可能だろう。
NPTの第10条にも、最上の国家利益が危険に直面すれば、NPTを脱退できる権限を規定している。アメリカ人は、自国を護るための正当な努力と意志に対して尊敬する尚武の精神が強い人々だから、アメリカの国益との合致しない部分は外交的に調整できるはずだ。
最も重要なことは、対北核協商力だ。北韓は、韓国が核武器を開発、保有するか、アメリカの戦術核が再配置されて完ぺきな核の傘や抑止力を保有すれば、自らの核武器の効用性を相殺することになるため、国際社会からの制裁と不利益まで甘受しながら、原爆に執着する理由が減少するだろう。南・北韓が共に核を保有した時、共に廃棄する協商が可能であって、韓国は持っていないのに、北側に廃棄しろと叫ぶのは協商力が無い。韓国の「核武装脅迫」は、北韓に「先核武器廃棄、後支援」の協商案を受容れさせられる唯一の方法になるだろう。李大統領のグランド・バーゲン提案は、このようなハードパワーを前提にして推進されねばならない。
最も大きな障害物はわれわれ自信だ。「韓国が核武器を開発すれば、アメリカおよび国際社会の圧力で、対外依存度の高いわが経済は大きな打撃を受けるだろう。アメリカが「核の傘」を提供するのになぜそのような危険を甘受せねばならないのか? 韓半島で民族共倒れを齎し兼ねない核戦争をしようと言うのか?」など、敗北主義を静めて国民を説得する課題が残っている。
屈従的な生存よりは名誉な犠牲も選択できる独立国家の市民精神がある時、北韓の原爆も除去でき、自由統一もできるはずだ。
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