400年受け継がれてきた朝鮮陶工の魂

ドキュメンタリー『ちゃわんやのはなし』 韓国初上映
日付: 2026年07月08日 06時38分

李熙健韓日交流財団・在日韓国人記念館  共催

  【ソウル】壬辰倭乱(文慶長の役で日本へ渡った朝鮮陶工たちの歴史、そして薩摩焼を代表する沈壽官家が400年にわたって守り続けてきた歩みを描いたドキュメンタリー映画『ちゃわんやのはなし―400年の旅人』が、韓国で初めて上映された。
 上映会は3日、ソウル市中区のソウルアートシネマで開かれ、李熙健韓日交流財団と在日韓国人記念館が共催、駐韓日本国大使館が後援した。作品には「わたしたちは、故郷を想い未来を見つめる」という副題が添えられ、韓日両国の文化交流の歩みと、その未来について考える機会となった。
 上映に先立ち行われたオープニングセレモニーには、主人公である十五代沈壽官氏をはじめ、映画を製作した李鳳宇代表、李熙健韓日交流財団の李勲顧問らが出席した。
 李勲顧問は歓迎のあいさつで、「沈壽官家が400年前から暮らし、祖先の精神と血脈を受け継いできた鹿児島・美山は、『在日韓国人の聖地』と呼んでも過言ではありません」と語った。さらに、「昨年、韓日両国は国交正常化60周年という大きな節目を迎えました。70周年へ向けても、こうした意義ある文化交流がさらに深まっていくことを願っています」と期待を寄せた。

沈壽官氏「一族のDNAは未来へ受け継がれていく」

続いて登壇した十五代沈壽官氏は、穏やかな口調で一族の歴史を振り返った。沈氏は、「初代・沈当吉は義兵として晋州城や南原城の戦いに加わり、その後、薩摩の島津軍の捕虜となって日本へ渡った。言葉では尽くせないほどの苦難を経験しましたが、薩摩藩、現在の鹿児島県一帯で厚い庇護を受ける中、朝鮮人としての誇りと、その恩に報いる責任を胸に歩み続けてきました」と語った。
 さらに、「400年以上の歴史の中で、姓を守り、陶工としての道を極め続けてきた私たち一族のDNAが途絶えることは決してない」と力を込めた。そして、「私の心にはいつも韓国の青い空が広がっています。そこには、ひげをたくわえた祖父が、いつも明るい笑顔で立っているのです」と語ると、会場は静かな感動に包まれた。
 この日は、青松沈氏宗親会から沈壽官氏へ祝福の花束が贈られたほか、名誉市民としてゆかりのある金浦市長から祝電も寄せられた。
 映画を製作した李鳳宇代表は、タイトルに込めた思いを次のように語った。「沈壽官先生とは20年以上にわたるお付き合いがあり、その年月を経て、この作品を作ろうと決意しました。『ちゃわんや』とは、茶碗を作る人という意味です。一見すると自らを卑下しているようにも聞こえますが、そこには職人としての誇り、先祖への深い敬意、そして自らの運命を真正面から受け止める覚悟が込められています」
 

「作品全体を貫く『民族とは何か』『家族とは何か』という問いは、製作に携わった私たち自身、そして先祖たちが問い続けてきたテーマでもあります」 十五代沈壽官氏のこの告白が示すように、本作は、韓と日本というを超え、籍や民族の違いを越えて生きるとは何かを、現代を生きる私たち一人ひとりに問いかけている。


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