【ソウル=李民晧】韓国政府が原油調達の基本戦略を抜本的に見直す。中東紛争の影響を受け、特定地域への依存を前提としてきた従来モデルから脱却し、調達先と輸送ルートの分散を進める。価格や輸送効率を優先してきた方針を改め、供給のレジリエンス(回復弾力性)を重視する方向に舵を切る。
金正官(キム・ジョングァン)産業通商資源部長官は19日、聯合ニュースのインタビューで「紛争の終結にかかわらず、中東以外からの導入拡大と輸送ルートの多角化を継続する」と述べた。米国産原油の輸入拡大についても「不可欠」との認識を示した。
韓国は2025年時点で、ホルムズ海峡経由の原油依存度が61%、ナフサは54%に達する。今回の紛争で同海峡が実質的に機能不全に陥り、サプライチェーンの構造的脆弱性が顕在化した。
政府はこれを受け、調達構造の見直しを急ぐ。従来は必要な分を適時に確保する「ジャスト・イン・タイム」を基本としてきたが、今後は供給源の分散と在庫確保を最優先する「ジャスト・イン・ケース」へ移行する。エネルギー政策における優先順位を、コストから安定性へと転換する。
非中東産の中でも、米国産原油の比率引き上げが柱となる。米国産の軽質油は中東産中質油との混合に適し、精製工程との親和性が高い。輸入拡大は供給安定に加え、対米貿易黒字の削減を通じた通商摩擦の緩和にも寄与する見通しだ。
ドナルド・トランプ政権が韓国の貿易黒字に対して圧力を強めるなか、エネルギー輸入の拡大は通商交渉におけるレバレッジとしても機能し得る。
石油化学の基礎原料であるナフサについては、供給不安が広がるものの、政府は短期的な心理要因が大きいとみる。上流の変動が下流に増幅される「リップル効果」により、市場不安が実需以上に拡大しているとの見方を示した。
政府は同時に、対米投資の拡大も加速させる。6月に発足予定の「韓米戦略投資公社」を通じて、約3500億ドル規模の産業協力を具体化する方針だ。
日本との比較では、投資発表と実行の乖離を指摘し、「スピードより、実効性のあるプロジェクトの積み上げ」を重視する姿勢を強調した。半導体や電池など韓国が強みを持つ産業ポートフォリオを生かし、「商業的合理性」に基づいた案件を具体化していく考えだ。
韓国のエネルギー政策は、効率優先からリスク分散へと軸足を移す。中東依存を前提とした調達構造を見直し、供給の確実性を担保する新たなフェーズに入った。