いま麹町から 72 髙木健一

真の平和をーこの稿の終わりにかえて
日付: 2026年03月30日 04時19分

 今回をもって私のコラム「いま麹町から」の筆を一旦置きます。つたない文章と浅薄な表現での問題意識を読んでくださった皆様には心から感謝いたします。
サハリン残留韓国人問題から始まった私の運動は1973年から2025年まで50年を越える時の流れがありました。このサハリン問題に続いて、在韓被爆者と在朝被爆者問題、さらに韓国とフィリピンの慰安婦裁判と香港軍票裁判など取り組みました。また、裁判だけでなく、90年頃からアジア太平洋の日本の戦争被害国の被害者団体が集まった「戦後補償国際フォーラム」を5年間開催しました。韓国、サハリン(ロシア)、フィリピン、香港、マレーシア、シンガポール、インドネシアのほか太平洋のパラオ、マーシャルやパプアニューギニアの被害者も参加しました。全て日本軍が展開したところです。おかげで私もミンダナオやマーシャルの島などもう二度と行けないような島々を訪ねることができたのです。
このような運動の結果、もちろん私一人だけの力ではありませんが、いくつかの成果が出ています。ご承知のとおりサハリン残留韓国人問題では、日本政府の予算で一時帰国、故郷訪問はこれまで延べ2万人近くが実現し、日韓両政府の共同作業で約4000人が永住帰国を果たしました。在韓被爆者問題は裁判の結果、日本人被爆者と同等の日本政府からの援護を受けられるようになっています。そして韓国「遺族会」関係では日本政府設立のアジア女性基金による元慰安婦に対する、日本国民と日本政府による償い金1人500万円と首相によるお詫びの手紙が届けられたことも成果といえます。
それでも何度も指摘したとおり、まだ極めて不十分です。政治・外交上の問題があるとはいえ、旧植民地であった台湾、北朝鮮、サハリンに対しては日本独立時の国際公約(サンフランシスコ平和条約による「特別取極」)があるにも関わらず、日本国は全く何もやっていないのです。また、植民地以外の中国(旧満州も含む)に対しては、莫大な被害をもたらしたのに被害者は放置されたままです。香港の軍票被害は財産上の損害として見逃せません。フィリピンやベトナム、マレーシア、シンガポールなども日本軍の支配に苦しんだところです。南太平洋のマーシャルやナウル、そしてパプアニューギニアなど激戦地にあったところで被害が多いのです。
これら被害をもたらした地域には、まだ被害の記憶があります。戦後80年が経とうが、その間、日本が平和憲法の下で平和を維持しようが、アジアの被害者は忘れてくれません。その戦後補償責任を果たすように私は訴えてきたのです。
このコラム(本稿)は本日で終わりますが、今後とも私たちのような活動があったことを記憶してください。少なくとも戦争を始めると、このような戦争被害者が無数に生じること、その被害の回復は加害国の義務であり、莫大な資金が必要となることを肝に銘じるべきなのです。戦争に関わることを強さの証明だと考え、自国のことのみこだわる愚を犯さないようにしたいものです。
本紙(統一日報)が在日韓国人にとってあるべき韓国社会を目指していることは知っています。その論調と平仄が合うかは確信を持てませんが、長い間勝手な主張を行う機会を与えてくださったことにも感謝します。私の主題は「戦後補償」ですが、時に日韓をめぐる古代史に関わることも勉強になりました。日本の歴史は朝鮮半島での各勢力の消長の影響が大きいことも知りました。そこから見ると単一民族の神話や万世一系という言葉に引きずられることもないのです。

(おわり)


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