今回のコラムで、本連載は最終回となる。「高談闊歩」というタイトルの通り、周囲の空気を気にせず思うままに論じてきた。本紙の主張、とりわけ「韓半島は統一すべきだ」という見識に必ずしも沿わないことも多く書かせてもらったが、それを許してくれた編集方針に改めて感謝したい。筆者は4年前、2022年8月15日の光復節に合わせたコラム「光復節にあえて『祖国統一』について問う」で、こう問いかけた。分断と戦争から100年に迫ろうとしている今、南北双方が掲げる「統一論」は果たして現実的なのか、と。
結論から言えば、あれは机上の空論ではないかという疑問から発した問いかけだった。しかし2023年末、金正恩総書記はついに「韓半島の統一を否定する」政策を打ち出した。まるで筆者が先に言っていたことを、北韓の指導者自身が追認したかのような形である。
もっとも、これは突然の路線転換ではない。北韓が韓国との断絶を選ぶのは必然であり、時間の問題だった。金正恩氏が背負っているのは、「金正恩独裁王朝を永続させる」という途方もない歴史的使命である。韓国との和解や民族共助、あるいは統一といったスローガンは、その体制を揺るがしかねない「雑音」になりうる。ならば答えは単純だ。韓半島北部だけで完結する国家をつくり、「金正恩独裁王朝」を存続させる。それが現実的であり、ほぼ唯一の選択肢だと彼は10年以上の統治の中で悟ったのである。同時に、この路線は「祖国統一」に人生を捧げたとされる金日成・金正日の業績を事実上矮小化することにもなる。北韓の住民だけでなく、日本の朝総連や韓国内の親北統一派にとっても、長年抱いてきた希望を無慈悲に打ち砕く宣言だった。それにもかかわらず、反応は驚くほど鈍かった。
韓国では「左派政権が誕生すれば、また和解路線に戻るのではないか」という甘い見方が残り、保守勢力は保守勢力で「金正恩は南侵を諦めていない、北は苦しくなれば韓国の左派に秋波を送る」という旧態依然の認識から抜け出せない、お決まりの解釈が繰り返されるだけだった。
しかし2026年2月、第9回朝鮮労働党大会で金正恩氏は改めて宣言した。「韓国は敵国であり、統一の対象ではない」これは単なる対韓強硬姿勢ではない。より本質的には、「北だけで完結する国家」をつくるという内向きの国家戦略の宣言であり、韓半島統一という幻想に終止符を打つものだった。21世紀に入って、統一どころか分断はむしろ固定化している。
この現実から目を背け続けるべきではない。大韓民国憲法の理念に従い、「金正恩政権の排除」を掲げて統一を目指し続けるのか。それとも南北に二つの国家が存在するという現実を受け入れ、そのうえで100年後の韓半島の未来を描くのか。本連載「高談闊歩」で繰り返し主張してきたのは後者である。統一幻想から脱却し、南北が別々の国家として関係をリセットする。そのうえで金正恩独裁体制と向き合う。
韓半島問題に関わってきた先人たちの「統一の夢」を否定するのは気が引ける。しかし幻想にしがみついたままでは、後世に残るのは「負の統一遺産」だけではないだろうか。
高英起(コ・ヨンギ)
在日2世で、北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。著書に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』など。