いま麹町から 71 髙木健一

米国の戦争犯罪と日本ー戦後補償責任の追及を
日付: 2026年03月17日 09時52分

 1992年に始まった遺族会(韓国太平洋戦争犠牲者遺族会)の裁判は、いわゆる戦後補償裁判約100件の代表と目される裁判です。
この遺族会は韓国人の日本軍人・軍属とその遺族によって構成されています。元慰安婦もある意味軍属と言ってよい存在でしたので、遺族会に所属しながら一緒に裁判をしたのです。この遺族会を原告とした裁判で追及したのは、戦争で犠牲となった民間人の救済です。
韓国の場合は、植民地支配のため、日本の戦争体制に意思に反して組み込まれたという苦痛があります。しかも、戦後は国籍がないとの理由で軍人年金(恩給)やその他援護制度から排除されたのです。他方、中国やアジアへの日本軍の展開に伴う現地での被害があります。平和な暮らしをしていた人々に対して、ある日、日本軍がやってきて食料や財産を奪い、女性をレイプし、時には基地まで拉致して慰安婦にすることもあったと私はフィリピンミンダナオ島で聞き取りました。
そのような日本の戦争犯罪の被害はアジア全土に無数にあったのです。そして、日本はその後の償いを何もしていないのです。
国との関係では賠償条約(ベトナムなど)や、請求権協定(韓国)を締結したところはありますが、被害者個人へは何も届いていません。被害者に届くように求める取り決めもないので、被害者に届かないのは当然です。まして、日本は北朝鮮と台湾に対しては、外交上の障害があるとして、全く何の戦後補償(特別取極も)もしていないのです。現在、被害者一世はほとんど死亡してしまい、償いを受ける機会すら与えられていません。せめて間接的被害を受けたその子の被害者2世に対しては償うべきではないでしょうか。
このようにやり残しの多い日本ですが、次の戦争の危険が出てきました。台湾をめぐる「存立危機事態」発言を撤回しようとしない高市早苗首相の姿勢は中国との関係を悪化させたままです。この高市首相の姿勢を「強い日本」の再現と評価して選挙で自民党を大勝させた国民も危ういと思います。
しかもさらに危ういのは、その高市首相が最も頼りにする米国のトランプ大統領の暴走です。2026年1月2日深夜、米国軍がベネズエラの首都カラカスを爆撃し、特殊部隊(デルタフォース)が侵入してベネズエラ大統領夫妻を拘束・拉致した事件は、明らかな主権侵害であり、侵略行為です。国際法違反であり、戦争犯罪に当たることに疑いの余地はありません。さらに、同年2月28日の米国とイスラエルによるイランに対する「大規模な戦闘作戦」の実施により、イランの最高指導者のハメネイ師を殺害したことも言うまでもなく、国際法違反の戦争犯罪です。
日本の最も緊密な同盟国である米国がこのように国際法違反を犯して戦争犯罪の罪を重ねるとき、日本はどのような態度をとるべきなのでしょうか。もちろん、戦争の即時停止と戦争犯罪の告発と被害の回復(戦後補償)をまず訴えるべきだと思います。
ウクライナ進攻にあたってはロシアのプーチン大統領、イスラエルのガザ攻撃についてイスラエルのネタニヤフ首相に国際刑事裁判所はいずれも逮捕状を発布しました。それなら、トランプ大統領にも同じく逮捕状を発行しなければならないはずです。ところがヨーロッパの平和勢力からも中国など敵対国からもトランプの戦争犯罪を非難し、逮捕状を発布すべきとの批判の声が少ないのは不可思議です。戦後補償を怠っているのは日本ですが、せめて、アメリカに対しても国際法の正義は守らなければならないと原則に基づいた主張をするべきだと思うのです。


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