北韓で2月19日から25日まで朝鮮労働党第9回大会が開催された。
本コラムでは、金正恩氏が2023年から主張してきた「大韓民国は敵国であり、もはや統一の対象ではない」という方針を再確認・固定化する重要な大会になるだろうと予想していたが、まさにその通りになった。
金正恩氏が示したのは、南侵でも武力統一でもない。むしろ「北朝鮮だけの国家」を完成させるという内向きの宣言だ。韓国を交渉相手として揺さぶるのではなく、最初から視野の外に置く。いわば「雑音の遮断」である。どのような形であれ、韓国との関係が存在する限り、韓国は「比べるべき対象」とならざるをえない。経済不況に悩まされていたとしても、両国の経済格差は歴然としており、北韓国民が韓国の豊かさに憧れるのは避けられない。
金正恩氏が王朝国家を建設するうえで必要なのは、体制の純化である。南北対話や民族共助といったスローガンは、雑音以外の何ものでもない。象徴的だったのは、大会直前に浮上した無人機問題だ。軍事的緊張を演出しつつ、韓国を挑発の主体として位置づけることで、国内の結束を固める構図がつくられた。
外部の脅威を強調することは、内部統制を強める最も古典的な手法である。だが今回の焦点は、対外威嚇そのものよりも、「外からの干渉を排した国家像」の強調にあった。
一方、韓国側は対話の必要性を訴え続けている。李在明政権が、対決的言辞を控え、信頼醸成を呼びかける姿勢はさもありなんだが、平壌の戦略はそこに応答する構えを見せていない。むしろ「懇願する韓国」という対比を通じて、北の主導権を国内向けに誇示する効果を生んでいる。
その延長線上にあるのが、後継体制への布石だ。近年、公式行事で存在感を強める娘の金主愛(ジュエ)氏は、単なる家族的演出を超え、国家の未来像と重ね合わされつつある。南北関係という可変的な要素を切り落とし、対外関係を単純化することは、王朝国家としての連続性を強調するうえで合理的だ。外部との和解や統一の物語は、後継者の正統性を説明するうえで、むしろ不純物以外の何ものでもない。
第9回大会は、韓国への「絶縁宣言」であると同時に、内向きの国家再設計宣言でもあった。対話か断絶かという二項対立を超え、平壌は「自らだけで完結する王朝国家」を描こうとしている。その最終的な帰結がどのような地域秩序をもたらすのか。今後の焦点は、韓国の出方以上に、北韓内部の権力構造と後継演出の深化にある。
金正恩体制は生き残りのために、過去の幻想を捨て去ろうとしている。しかしながら、韓国の保守はいまだに時代遅れの「南侵幻想」に、進歩派は夢物語の「平和統一幻想」から逃れられていない。反論を百も承知で言うが、金正恩氏の敵対的国家論とは異なるアプローチで、韓半島の統一幻想から脱却することが、大韓民国、そして在日社会にも求められている。
高英起(コ・ヨンギ)
在日2世で、北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。著書に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』など。